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和製グローバル人材を増やそう

ISC留学net代表 兼 (株)ライトハウスエデュケーション取締役会長 大場規之

■日本企業に必要なのは即戦力外国人なのか?

 ISC留学netは,全国47都道府県の学習塾が母体となり中高生の留学支援を行っている組織です。私は留学に対する日本社会の関心度をつかむため,日本の主要メディア320媒体で,「英語」や「若者の内向き」といったキーワードが年間でどの程度使われ,どのように記事が書かれているか2008年度から調べています。その一環で「留学」と「採用」の関係性を調べるため「外国人・採用」というキーワードに注目しました。すると2008年から2011年までに「外国人・採用」という言葉の使用数は増減を繰り返していたものの,2012年から増加傾向になり2015年でその数は,2012年の約1.8倍に増えていました。振り返ると当時は,パナソニックとファーストリテイリングが新卒採用の8 割を外国人にする,イオンが外国人1,500人を採用するといった,外国人採用に関する話題が多く報道された時期でした。即戦力となるであろう外国人社員を中心としたグローバル戦略の強化が狙いだったといえるでしょう。しかし,日本企業が海外市場で戦うために多くの外国人採用が本当に必要でしょうか? 私は日本企業が海外事業を成功させるうえで,外国人社員も必要だと思いますが,日本の義務教育を受け,海外で学び,自立力や多様性を身につけた“和製グローバル人材”の活躍がさらに欠かせないと考えています。

■活発化する和製グローバル人材育成への取り組み

 ここ数年,“和製グローバル人材”の育成を目的にした国や自治体,経済団体の動きが活発化しています。政府は留学生を2020年までに2013年比で倍にする目標を掲げ,高校・大学生向けの海外留学支援プログラム「トビタテ! 留学JAPAN」を実施し,静岡県など都道府県でも留学支援制度が始まっています。そのように全国規模で様々な取り組みが行われるなか,内閣府は全国3,000人の成人に実施した『教育・生涯学習に関する世論調査』の結果を発表しました。興味深かったのは「グローバル人材育成のために,子どもや若者に海外留学をさせたほうが良い」と考えている回答者が8割を超えたということです。この数字は留学を通じたグローバル人材の育成への期待が高いことを示しています。

■若者は留学で何を学んできているのか?

 では,留学は人材育成においてどのような効果をもたらすのでしょうか。弊社では数年前に留学経験者を対象にした調査で「留学で得たものは何ですか?」と聞いています。すると最も多かった回答は「自立心」でした。これに「コミュニケーション能力」「ポジティブ思考」「共感力」「意志の強さ」「視野の広さ」「親への感謝」と続き,「英語力」は最後となっています。回答者のほとんどが留学前に「英語を話せるようになりたい」と願い,十分な英語力をつけて帰国したにもかかわらず,英語力以外の,人として欠かせない様々な力を重要視している点が印象的でした。彼らの回答が物語るように,留学は語学力の習得だけでなく,“生きる力”を身につける場でもあるのです。留学中は多くの困難を自分で乗り越えなければなりません。物や情報があふれ不自由のない日本での生活から距離を置き,言葉も通じず自らしか頼るものがない世界を生きる体験は,自立心を育み,大きな成長と自信をもたらします。そのような環境で身についた“生きる力”は,グローバル社会を生き抜く力となります。このような力を持った“和製グローバル人材”がもっと日本企業で活躍し,海外事業に大きな貢献を果たす時代が来ると信じています。そして,1人でも多くの若者がグローバル社会で活躍できるよう,留学支援を通じて“生きる力”を育んでいきたいと思っています。

(月刊 人事マネジメント 2016年4月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1963年生まれ。慶応義塾大学理工学部卒業後、大手計測機器メーカーに勤務しフランス・ドイツを中心に欧州に駐在。帰国後、株式会社和田塾取締役就任。静岡県議会議員を経て、株式会社和田塾代表取締役に就任。2015年10月に株式会社ライトハウスエデュケーションに社名変更し取締役会長兼ISC留学net代表に就任。趣味は旅行、釣り、スキー。子供は大学生。教育のモットーは「かわいい子には世界を旅させよ」。

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