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副業が当たり前の社会にしよう

NPO二枚目の名刺 高橋明日香

 働き方改革が進む今,副業への意識も変わりつつあります。一部の企業では副業規程の緩和・撤廃などの対応が始まっており,本業・本職がすでにあることを条件に社員を採用する企業も登場しています。NPO二枚目の名刺が実施した『副業に対する企業の意識・実態調査』では,「副業(社外活動)をしている」社員は約2割,「1年以内に副業に取り組んでみたい」と答えた人が約4割に上りました(図表)。また,副業を禁止している会社に「魅力を感じない」とする回答は約6割という結果です。



■副業の動機・活動内容が変化してきた

 「副業」と聞くと,小遣い稼ぎ・副収入を目的として“会社に隠れて”“本業・本職の片手間にやる”といったイメージがあるかもしれません。しかし,働き方改革が進み,企業の労働環境や条件,それに伴う制度の見直し,個人の働き方に対する考えが多様化して,副業に対する意識も変わってきています。最近増えてきているのが,“キャリアアップするうえで自身の力を社外で試してみたい”“本業・本職では取り組めない社会課題に関わりたい”といった想いから,社外での活動に取り組む事例です。
 NPO二枚目の名刺が企画・運営する取り組みの1つに,業界・職種・世代も様々な社会人がチームを組み,NPOの課題解決に向けて,3ヵ月間取り組む「NPOサポートプロジェクト」があります。これまでこのプロジェクトに参加した社会人たちに副業(社外活動)を始めた動機を聞くと,“自分が本業でやってきたことが社外でどの程度通用するのか試してみたい”“もともと興味のあった分野の活動に取り組んでみたい”“定年後を見据えて会社の肩書きがなくなったときに何ができるのか考えたい”など自身のキャリアや生き方に対して前向きな回答が多くありました。プロジェクトに参加した社会人は,ビジネスの世界とは異なるNPOの課題を目の当たりにし,メンバー同士の違いを認め合いながら議論を重ねるなかで多くの発見を得ます。
 また,こうして社外に飛び出したことで得た発見を,自身の本業・本職に生かす流れも生まれています。先の調査で,副業によって本業・本職の仕事に良い影響があったかどうかを聞いたところ,「自分を客観視できるようになった」「視野が広がり大局観を持てた」「スキルの社会的価値が分かった」が上位3項目に挙がっています。

■社外活動の経験は社内に還元できる

 従来の副業は,ベクトルのすべてが自分に向き,できるだけ閉じた世界で活動しようとする傾向がありました。一方,現在広がりつつある副業は,ベクトルが社会に向いています。個人が今いる組織や立場を超え,これまでの枠組みにとらわれることなく,NPOが抱える課題解決のサポートを行ったり,スキルを活かして地域の課題に貢献しようといった取り組みです。このような社外活動の動機は,個人の本質的な興味・関心に基づいていることが多く,本業・本職に還元できる発見も得やすいのです。
 社会をより良くすることに積極的な社員ほど,企業の成長やイノベーションにも主体的に寄与するといえるでしょう。企業として,社員を社外活動に送り出すメリットは大きいと思います。

(月刊 人事マネジメント 2017年10月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
立教大学在学中より日本ケニア学生会議、NPOカタリバ、NPOブラストビート、ビジネス系出版社で学生記者として活動。大学卒業後、社会課題解決に向けて取り組む団体や個人を、広報によってサポートすることを目指し、一枚目の名刺として広報代理店に勤務。2016年よりNPO二枚目の名刺に参画。二枚目の名刺を持つことが当たり前の選択肢となり、企業・行政・NPO間の人的交流が活性化することで、NPOのコミュニケーション課題の解決を目指している。

>> NPO二枚目の名刺
 http://nimaime.com/