オンライン学習が企業と社員の未来をつくる

Udemy,Inc.　日本市場担当オペレーションディレクター　松方 肇

　2020年３月，新型コロナウイルス拡大に伴いオフィスや学校の閉鎖がされ，私たちの職場や生活環境は突然ガラリと変わりました。人との交流が制限され，パソコンのスクリーンを通して，ZOOM会議やオンライン授業に参加する日々が続きました。私の住むサンフランシスコも例外ではなく，子供の学校は閉鎖から13ヵ月経った2021年４月にやっと対面授業を再開しました。しかし，勤務先はまだオフィスを再開する日付の目途がたっておらず，パンデミックが与える影響は決して小さくありません。

■コロナ禍で「人が変わる，学びが変わる」

　世界経済フォーラムによると，新型コロナウイルス拡大をきっかけに今後リモートワークやデジタライゼーション，オートメーションが加速し，結果的に働く人の50％は2025年までにリスキルが必要になるといわれています。しかしそれは変わる社会に対して人々が順応していくためだけではなく，見えない不安に立ち向かうための自発的な動きでもあると私は思います。
　弊社アンケートによると，米国のフルタイム労働者1,000名のうち，72％の回答者がパンデミックは今後の生活にマイナスの影響を与えると思うと回答しています。しかし，多くの人はただ不安を抱き，ポストコロナの世界を待っているだけではなく，これを機会に何らかのアクションをとろうとしています。67％の回答者はテレワークでなくなった通勤時間や，対面では難しくなった人との交流の時間を自分のスキルを高めるために使いたいと回答しています。興味深いのは，スキルアップを検討している人のうち，学校に通って学ぶと答えた人はたったの13％という点です。約半数の人（49％）は「オンライン学習」でスキルアップしようとしています。
　オンライン学習は，場所や時間的制限のない，非接触のサービスです。学習者はコンピューターやスマホを利用し，自身のペースで，いつでもどこでも，自分が一番必要としているスキルや興味のあるトピックを学習できます。世界中の教えたい人と学びたい人をつなぐ世界最大級のオンライン学習プラットフォーム「Udemy」では，昨年世界中で外出自粛の動きが始まった後，新規ユーザーが425％増加しました。日本国内でもユーザー数は同じように伸びており，ビジネスアナリティクスやAWS，オフィスでの生産性などが，通常人気のプログラミング系のコースを抜いています。

■不透明・不安感を払拭する学習環境を

　新型コロナウイルス拡大以前から，Society 5.0やAI戦略などの国の動き，また，働き方改革や副業解禁などを進めようとしている企業の増加により，リスキルの重要性は高まっていました。パンデミックを契機にさらに加速する社会の変化に企業も対応する必要があり，そのカギはオンライン学習を活用した人材育成にあると信じます。
　この動きで大切なのは，社会的変化に企業が対応する人材教育にとどまらず，社員自身の自律的な成長を支援する姿勢です。日々聞こえてくるレイオフや教育格差に関するニュース，そして先行きに不安を感じている人は日本にも多くいます。そうした環境であるからこそ，必要な知識を学べる最適化された講座を提供し，実用的なスキルが身につく環境を整え，従業員の成長をサポートすることが不安を取り除くことにつながるのです。
　松下幸之助は，社員そしてその家族を守る経営を心がけていました。なかでも社員を育てることを重視していました。時代や環境は変わっても，根本は今も同じです。これを機に社員のためにオンライン学習の導入を検討してみてはいかがでしょう？

（月刊 人事マネジメント　2021年７月号　HR Short Message より）