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行動が変わるコーチングのヒント

Coach MIKI 三木未希

 働く人の価値観が多様化するなかで,会社にとっての幸せと個人の幸せが必ずしも一致するわけではありません。そんな時代の人事担当者にとって,社員の挑戦と成長を促すための施策展開は切実な課題ではないでしょうか。ここでは良好なメンタルとマインドアップによって行動変革を実現する「コーチング」を軸に,挑戦できる土壌づくりを考えます。

■「変わりたいけどムリ」惜しい社員の心理

 上司や人事担当から見て,もう少し頑張れば,もう少しここが変われば評価が上がるのにと思う社員,つまり「惜しい!」社員には概ね以下の2つのパターンが考えられます。
@今のままで十分だと思っている,変わる必要はないと思っている社員
A変わりたいけれど無理だと思っている社員
 ここで,お聞きしたいことがあります。「惜しい!」と思っている本人に,変化を期待していることを伝えていますか? 本人が変わらない(変われない)と思う理由をヒアリングしていますか? ただ,上司や人事担当者が質問しても,正直には答えづらいかもしれません。そこで活用いただきたいのがコーチです。コーチは第三者(評価しない者)として存在し,問いかけることで本人の気づきを生んで主体的な行動につなげます。
 筆者の経験では,@の社員は往々にして,「成長しても評価されない」と感じ,その考えに至っています。これは単なるコミュニケーションの「質」不足に原因があるケースが大多数です。職場の心理的安全性を高め,コミュニケーションの質を上げていく取り組みが効果的といえます。
 Aの場合は,本人が「自分には無理だ」と思い込み,周囲も諦めてしまっています。このような本人ですら理由がよく分からない思い込みには,無意識にアプローチするプロのコーチの対応が有効です。

■メンバーが安心して挑戦できる働きかけとは

 社員が安心して挑戦したくなる仕組みづくりとして,評価制度等の整備に加え,ぜひ心理的安全性の向上にも目を向けていただきたいと思います。コロナ禍以降,とみに重要性が論じられるようになった職場の心理的安全性向上のために,ぜひ取り組んでいただきたいのは「ただ話を聞くこと,ただ話をすること」です。これを各社の実情に合った仕組みとして浸透させてください。今注目されている1 on 1も,強制的に「ただ話を聞く,ただ話をする」機会になります。その際に有効となるアクティブリスニングの簡単なコツをお伝えします。
●相手をかけがえのない人だと思う(リスペクトする)
●同意できなくても共感できる部分を見つけようとする
●自分がいいと思ったところ,相手が大切にしていることに注目する
●自分の考えや意見は横に置いておく
●相手の気持ちをくみ取ろうとする
 コーチによるアクティブリスニングを体験された方は,「気持ちがよかった」「大切にされている感じがした」「もっと話したくなる」「受け入れられているという安心感があった」というような感想を多く寄せてくれます。実はコーチの側も,その方を大切に思う気持ちや,もっといい人生を歩んでいただきたいという願いを感じているのです。社内でもこれと同じように,聞き手と話し手の両方が良い時間を持つことが理想です。会社員にとっての挑戦マインドは,安心の土壌の上にしか成り立ちません。どうかコミュニケーションの質に目を向けることで,チャレンジの気風を育んでください。

(月刊 人事マネジメント 2023年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1978年、奈良県生まれ。同志社女子中学、同志社女子高校、同志社大学文学部(文化史学)卒業。同志社大学リエゾンオフィスにて 産学連携コーディネートと学生ベンチャー支援業務(5年間)。(公財)横浜企業経営支援財団にて 技術系ベンチャー企業の経営支援業務(インキュベーションマネージャー9年間)。2018年3月コーチとして独立開業。パーソナルコーチングでは、30代ビジネスパーソン、公務員、クリエイターのクライアントが多い。経営者のパーソナルコーチングや中小企業でのコーチング、講演や研修でも活躍中。著書に『つよつよメンタルで人生は思い通り』(KADOKAWA)。

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