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書評 2017.03

マネジャー育成講座

 “人と組織のマネジメントに必要なノウハウを幅広く取り扱う”という主旨から,「課長の教科書」とでもいうべきコンテンツが整理されている。管理者のポジション,リーダーシップ,部下の動機づけ,目標設定,コンピテンシーなどの理解に加え,労働法の基礎およびメンタルヘルス対応の章も独立させ,知識項目の充実した構成に仕上げている。汎用性を確保するため,あえて学術的な知見を盛り込んだとされるが,よく読むと細部の記述は生々しいほどのリアリティにあふれ,決して難解ではない。「よい上司」と「悪い上司」の比較,仕事を部下に任せきれずに結局自分で手を出してしまうプロセス,昇格者同士のライバル感情などの心理描写は,むしろ読んでいて楽しい。「課長」という役職パワーに頼るだけでは部下は動かず,組織の成果も上がらず,「ダメ管理者」のレッテルを貼られるリスクすらあると指摘。周囲が「ついていきたい」と認めるリーダーになれるよう諭してくれる。新任管理者にはぜひ本書を読み込んで学習するような機会を提供したい。

●著者:本寺大志/小窪久文/中嶋義文  ●発行:経団連出版/2017年1月1日
●体裁:四六版/231頁  ●定価:1,800円(税別)

キレイゴトぬきの就活論

 新卒一括採用が続く現実にあって,企業,大学,学生(その親たち)は,状況をどう理解すればいいのか。本書はその不安に応えるべく“就活の今”を切り取ってレポートしている。「夢を持て」「夢を持つな」という両極論に始まり,学歴フィルターの真相,大学ブランド価値,エントリーシートの新動向,不採用が確定的になったとき(あるいは内定辞退するとき)の「きれいな別れ方」に至るまで,この数十年の変化が等身大の感覚で把握できる内容だ。一方で,例えば「ブラック企業」の問題では,その見抜き方を軽々しくレクチャーするわけではなく,成長企業と優良企業の違いを問い返し,冷静な視座を提供。また,就活の混乱では,実力に対して応募先が大企業に偏るギャップも大きいとして,知名度はともかく優れた特徴のある中堅企業を300社リストアップしている。本書に提起された諸課題には,結局,正解がなく,各自が置かれた立場で判断し行動するしかないという大原則に引き戻される。学生・企業とも視野を広げるという意味で参考になりそうだ。

●著者:石渡嶺司  ●発行:新潮社/2017年1月20日
●体裁:新書版/221頁  ●定価:760円(税別)

あなたのキャリアのつくり方

 新卒入社で定年まで「普通に働くこと」が困難な時代であるなら,この際「別の道」を探ってはどうかと著者は提案する。その手がかりとして「NPOで働くこと」に着目し,各種の統計資料を用いて多角的に実相を探っている。NPOで働くメリットは,“多様な働き方の実現”と“社会との関わりの実感”の主に2点。対してデメリットは,労働条件だとされる。それでも若手の場合はNPOで経験を重ね,そこで得た知識や技能を次のキャリアに活かす“投資的動機”に意義があると認める。また,ワーク・ライフ・バランスとの整合性から,特に女性たちに肯定される働き方ではないかとも考察を加えている。興味深いのはセカンドキャリアでのNPO参画だ。ファーストキャリアの段階で出世してきた元会社員や先生と呼ばれてきた方々は,新参者の立場を受け入れられずに自ら離れていく傾向があると報告されている。企業を否定するわけでも,NPOを絶賛するわけでもなく,自分なりの働き方を探るヒントを示唆するスタンスは良心的であり,素直に読める。

●著者:浦坂純子  ●発行:筑摩書房/2017年2月10日
●体裁:新書版/208頁  ●定価:820円(税別)

世界の一流36人「仕事の基本」

 誰もが知るアスリート,政治家,投資家,デザイナー,学者ほか各界一流の人たちが,何を考えどのように行動し成功を収めてきたのかを,彼らの名言から切り取った編集企画。登場人物は,福澤諭吉,バラク・オバマ,松下幸之助,ビル・ゲイツ,ピーター・ドラッガー,マイケル・ジャクソン,マーガレット・サッチャー,ロバート・デニーロほか多彩な顔ぶれで計36名に上る。著者自身はゴールドマンサックス,マッキンゼー出身で現在はグローバル人材開発事業に携わる立場にあり,人の能力に関わる急所をよくご存じだ。実際,本書におけるトピックの選択基準は読者が「日常で実践できる」「心に響く」という条件だったとその意図を明かしている。一例では,ソニー(東京通信工業)の会社設立趣意書などおなじみの逸話も紹介されている。名言とその背景となる物語,ビジネスに活用できるエッセンスがよく整理され,計10章にわたる区切りごとに要点がまとめられている。時間の考え方,行動の律し方,チャンスの見極め方など先人に学ぶ余地は改めて多い。

●著者:戸塚隆将  ●発行:講談社/2017年2月14日
●体裁:四六版/263頁  ●定価:1,400円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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