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書評 2021.01

ブラック霞が関

 40代ベテラン幹部にして厚労省を退官した著者が,体験ベースで官僚のリアルを語る。働き方だけを切り取ると書名通りブラックだが,著者の意図は必ずしも劣悪な労働実態の告発ではないようだ。むしろ労働条件は二の次であり,多忙・非効率な状態が本来官僚が全うすべき仕事を妨げ,国民生活へのサービス劣化を招く危うさを突く内容といえる。官僚たちがブラックな働き方になってしまう原因の1つが国会対応だとされる。翌朝の国会準備のために,連日夜中に働く姿を描写し,結果的に365日24時間対応できるタフ人材だけが本省に残り,官僚たちの働き方の見直しは一段と鈍くなる構造をあぶり出している。後半では私論として「本当に官僚を国民のために働かせる方法」「本当に国会を国民のために動かす方法」につき,それぞれ10項目の提案をまとめている。話題の法案がどのようなプロセスで形になっていくのか,時に世論からズレた政策がなぜ打ち出されてしまうのか,背景事情が把握できて興味深い。人事としては舞台が厚労省という点も見逃せない。

●著者:千正康裕  ●発行:新潮社/2020年11月0日
●体裁:新書版/240頁  ●定価:780円(税別)

より良く働くためのワークマネジメント

 自分も周囲も成長する「より良く働く」ための要素を俯瞰的に検証する過程で,著者はいくつかの無駄を指摘する(状況を報告するだけの会議,会議のための会議,念のためのccメール,等)。また,上司の役割につき,降ってきた仕事を都度部下に割り振るようなやり方は,メンバーが自律的に働けない「古いワークスタイル」だとマネジメントの転換点を見極め,「新しいワークスタイル」を提案。本書前半の概論では「ビジネスの目標」「必要な仕事」「担当者と締め切り」「権限と責任」を設定し,上司1人のPDCAではなく,メンバー全員を組み込んだOODAループによる即時対応型の進め方をモデルにまとめている。続く後半は,クラウドで仕事を管理するソフトウェアの紹介にページを割く。マネジャーのための管理ツールではなく,全員のタスクと進捗状況をリアルで共有する透明性に特徴を見出し,報連相も会議もccメールも“やってる感”の演出も不要になるメリットを挙げ,刻々と変わる仕事のトリアージに活用する先進企業の導入事例もレポートしている。

●著者:田村 元  ●発行:現代書林/2020年11月30日
●体裁:四六版/192頁  ●定価:1,300円(税別)

サラリーマン生態100年史

 日本文化史研究家を自認する著者(日本人ペンネーム説が濃厚)は,明治以降の新聞・雑誌・映画・ドラマを調べ,社長・社員・職場の「おもしろすぎる生態」を本書に整理している。資料調査自体は真面目で地道な作業だったと思われるが,文体はユーモラスで,ぶっちゃけた記述が楽しい。昭和の社長・秘書・マイホーム・新入社員・痛勤地獄・宴会・出張・こころの病・ビジネスマナー・産業スパイ……と章タイトルを並べるだけでも懐かしさと奥深さが想像でき,実際,内容も期待をほぼ裏切らない。満員電車の課題は大正時代からあり,時差通勤の提案もその頃からあったと読者は博識になれる。勤労者のメンタル不調では,夏目漱石の神経衰弱に始まり,1970年前後のモーレツブームとノイローゼ,1980年代以降の過労死までの変遷が理解できる。サラリーマン・OLの宴会芸に至っては,ばかばかしい歴史を愚直に追い,100年の間,日本の会社員はズッコケ人材が多数派であり「昔の人は立派だった」わけでは決してないと,結論めいたまとめを導き出している。

●著者:パオロ・マッツァリーノ  ●発行:KADOKAWA/2020年12月10日
●体裁:新書版/269頁  ●定価:900円(税別)

9割の中間管理職はもういらない

 上司と部下に挟まれ,組織のアウトプットを求められる中間管理職の存在意義を問う1冊。コロナを契機に社会が変わるというより,すでに先行していた変化が加速するだけではないかとマクロの動きを捉え,雇用がジョブ型へシフトするならいよいよ不要な中間管理職が顕在化すると著者は見ている。また,自身の体験から「(部下の申請を)承諾して,(上司に)報告して,(外部と)挨拶するだけ」の人は“いらない・使えない”と切り捨て,仕事のための仕事に忙殺され,効率悪く何も生み出していない人は,不要ぶりが顕著だと警告する。さらに,1人忙しく殺気立つプレイング・マネジャーの姿にも懐疑的で,10人の部下の成果を10%高めれば,組織のアウトプットはプレイング・マネジャー1人のがんばりをはるかに超えるとはじき出す。ただ,本書の訴求は9割のダメぶりをあげつらうことではない。@部下を支援できる人,A現場からイノベーションを起こせる人,この2点に注目して,必要な1割の中間管理職になるための要諦をアドバイスしている。

●著者:佐々木常夫  ●発行:宝島社/2020年12月24日
●体裁:新書版/192頁  ●定価:900円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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