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書評 2021.06

「定年後」のつくり方

 定年退職して悠々自適の老後生活を送る「定年1.0」,年金支給年齢の繰り下げと雇用延長の不安に苦しむ「定年2.0」を経て,今は,人生100年時代の収入・生きがい・働きがいを模索していく「定年3.0」を迎えているというのが本書の認識だ。改正高年法では「70歳」という目安を掲げつつ,雇用だけではなく独立自営を支援する関係も認めていることから,個々人は今の会社に何とか残れるようリストラに怯えるのではなく,ジョブ型に適応し,会社から離れてもやっていける「自走力」を身につけるべきだと中高年読者を鼓舞。定年退職して,無理に趣味やサークル活動を始めても長く続かない例は多いと指摘し,慣れ親しんだ仕事の分野で得意のスキルを生かせる場を見つけるのも1 つの方法だと誘いかける。定年後,何かしたくても居場所を見つけられない「定年後難民」を予防する意味でも,50代からの助走期間は重要だと述べ,リカレント(学び直し)の実例もいくつか挙げている。ロールモデルの少ない中高年の働き方・生き方に一定の見通しを示してくれる1冊。

●著者:得丸英司  ●発行:廣済堂出版
●発行日:2021年2月1日  ●体裁:新書版/208頁

部下を育ててはいけない

 リクルート,ライブドア,LINE,ZOZOと個性の強い組織・経営者のもとでビジネスを担ってきた著者が,25項目の「上司力改革」を整理した1冊。「リターンの見込みのある部下と見込みのない部下を選別し,ダメな部下は取り替える」と断言するなど,言説は多分にリスキーだが,目指すべきは「良き上司」ではなく「圧倒的な成果」だと腹をくくっていて,武士道に模した「上司道」を説くスタンスは豪快だ。会社への忠誠では成果は出ないと見切りをつけ,いかに部下を介してパフォーマンスを上げていくかにこだわる“突き抜けた個人”を1つのモデルに挙げ,その姿は“組織人”とは矛盾しないとも語る。また,マイクロマネジメントに陥る上司たちには,ビジネスで大勝ちするための大局観を諭し,行動の側面では“はったり”を含む演技力の発揮も求めている(著者自身が手がけたリクルート社『R25』の創刊など“はったり”が大成功した事例も載せていて,数々の逸話は面白い)。賛否割れそうなタイトルにして,ホンネあふれるリーダー論に要注目。

●著者:田端信太郎  ●発行:SBクリエイティブ
●発行日:2021年4月15日  ●体裁:新書版/208頁

わが社の主戦力は障害者

 障害児支援・就労支援を展開する著者の会社は,創業から10年で100人の障害者を雇用するに至っている(障害者定着率94%)。採用にあたってはどのような障害がありサポートが必要かを隠さずに話し合い,職場では,本人の特性に合った環境を整え,無理なく必要な習慣を身につけてもらい,適切な方法でコミュニケーションを重ねる進め方で成功している。個々人の特徴をよく見極めたうえで,例えば作業が早く正確な発達障害の方には文書入力を担当してもらい,また,好きなことはやるが,その他の仕事には背を向けてしまう方には「職場の役に立っている」実感を伝え続け,協調性とともに才能の大化けを導き出した。同性で年齢の近いキーパーソンをつけたり,不安に陥らないようまめに評価を伝えたり,雇用定着のコツはいくつもあるようだ。社会性と事業性の両立を目指して奮闘する著者は,採用側が「手の掛からない人」を探す限り,障害者雇用の本当の意味での成功は得られず,障害者をコストと考えること自体がリスクではないかと問いかけている。

●著者:吉田昭元  ●発行:幻冬舎メディアコンサルティング
●発行日:2021年4月26日  ●体裁:四六版/198頁

新型格差社会

 「新型コロナウイルスは,人と人が接する社会のあり方を著しく変えた」と看破する著者は,コロナ禍が日本社会に潜んでいた種々の格差を顕在化させたと指摘する。具体的には,@家族,A教育,B仕事,C地域,D消費の5つの分野を考察。下層での影響がより深刻で,かつ,コロナ収束後もそれ以前には戻れない予感が国内に蔓延し始めていると分析する。一例では,“夜の街”が封鎖され,ステイホームを強いられたことで,夫婦間のバランスが崩れ,女性の自殺が増える因果を洞察する。また,リモートワークの影響では,PCを開き英語で会議をしている親の姿を目にする子と,Wi-FiもPCもなくオンライン授業に参加できない子との間に生じる教育格差を問題視する。リモートワークでは成果の出せる人が評価され,人間関係で何とかしてきた人は脱落する構造にも格差を見出している。格差が長期化し,世代を超えて固定化していく階級社会を警戒する著者は,まず目の前の格差を認め,その分断を多様性で埋めていく試みが必要ではないかと提案している。

●著者:山田昌弘  ●発行:朝日新聞出版
●発行日:2021年4月30日  ●体裁:新書版/197頁

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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