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書評 2022.01

大人のいじめ

 本書には実際の相談内容からいくつもの職場のいじめ事例が再現されている。読み進めるのもためらわれる凄惨なケースを含め,本当にこんな前近代的な話があるのかと驚きを禁じえない。業種では医療・福祉(介護施設・保育園)が多く,被害者では発達障害(ADHD)の方や,問題を告発した社員への嫌がらせが典型的だと報告されている。種々の事案を整理する過程で,背景には長時間労働や人手不足による過重労働が認められると著者は読み解く。上司・先輩の異常な言動を制止・告発するどころか,同僚が行為者,傍観者としていじめに加担してしまう挙動には「ガス抜き」の作用を疑い,会社が労働環境の不満をそらすためにいじめを容認(黙認)していると説明する。解決のポイントでは現場が声を挙げ「いじめの放置こそコストになる」と会社に理解させることだと強調。巻末付録の章に「職場のいじめに悩む人への実践的アドバイス」と題して,会社・上司に相談する前に,会社を辞める前に,証拠集めをする方法と外部へ相談する手段を紹介している。

●著者:坂倉昇平  ●発行:講談社
●発行日:2021年11月20日  ●体裁:新書版/263頁

日本人の給料

 1997年をピークに日本人の平均年収が減少し続けている現象につき,序章に続けて7人の識者がインタビューに答える。給料が上がらない理由では,各氏の専門分野それぞれに原因が指摘され,いずれの説も合点がいく。例えばマクロ経済では金融破綻以降の企業の内部留保。中小企業経営では人材難(若手に厚くする分,中高年の賃金を削減)。反対に大企業では,中高年への不利益変更ができないがゆえに,若手の昇給率が逓減されているとも説明されている。また,組合の役割では「物価上昇分をカバーしうる賃上げ」という要求根拠がデフレで希薄になった経緯に加え,組合員は「賃金カーブの維持」という前提で交渉できるが,多数の非加入者は漏れてしまう事情も明かされる。世界に目を向ければ,必ずしも諸外国が順調に成長しているわけではなく,賃金指数が伸びている反面,物価・税金も高く,生活実感は厳しい。どの国も業種間の格差が大きいという共通点がある一方,勤続年数による昇給は日本だけに認められ,特異な社会構造も浮き彫りにされている。

●著者:浜 矩子/城 繁幸/野口悠紀雄/ほか  ●発行:宝島社
●発行日:2021年11月24日  ●体裁:新書版/240頁

なぜ,日本の職場は世界一ギスギスしているのか

 働き方・組織・マネジメント領域で改革支援を手掛ける著者は,関係先から見聞きした数々の“ギスギス”を大きく3種に分類する。1つは「環境によるギスギス」,2つ目は「スキル・メンタリティによるギスギス」,そして3つ目は「制度によるギスギス」だ。具体的には「管理職・上司は現場を知らないくせに」といった不満・不服従や「上司を通して言え」といった階層組織,相談しにくい社員間のコミュニケーションのまずさが問題視されている。また,「テレワークで仕事がはかどらない」という課題では,テレワーク以前の仕事のプロセスに改善点があると見抜き,ムダをそのまま電子化しても効率化されないと解説している。「雑用が多すぎて専門スキルを伸ばせない」ケースでは,「なくす・減らす・自動化する・専門家に任せる」といった効率化の処方を提案。終身雇用ゆえの組織の閉塞感では外部人材の取り込みを説く。気合・根性・体育会系に象徴されるみんなで仲良く苦しむ文化はおしまいにしようと時代に即した合理性を強く訴えている。

●著者:沢渡あまね  ●発行:SBクリエイティブ
●発行日:2021年12月15日  ●体裁:新書版/216頁

中小企業のための人事評価の教科書

 コンサルタントの立場から150社以上の人事制度構築を担ってきた著者は,多くの事例に共通する機能不全を指摘し,本書に最適解を提案している。初めに人事評価は何のために実施するのかという本質的な問いを立て,「査定と処遇」にエネルギーを費やすのではなく,「評価から育成・成長へ」「目標の設定と達成へ」PDCAサイクルの実行に注力すべきだと捉え直す。人事担当者には,面談が滞りなく実施されているかではなく「それで社員は成長し,目標は達成されたのか」が重要だと再認識を迫り,公平性も納得性も優先課題ではないと割り切る。査定のための評価はせず成果と成長のためのフィードバックを重視するという特徴は「ノーレイティング」にも近似する。個々の管理者の我流に任せるのではなく,すべてのマネジャーのレベルを向上させる共通の武器として「人事評価シート」「部門課題計画シート」「部門課題進捗確認シート」「個人目標シート」「等級別要件基準書」など帳票サンプルも載せ,運用の機微を高い熱量を維持しながら全面公開している。

●著者:宮川淳哉  ●発行:総合法令出版
●発行日:2021年12月22日  ●体裁:四六版/318頁

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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