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書評 2024.05

Z世代の早期離職は上司力で激減できる!

 「上司力」の強化を掲げて研修事業に注力する著者が,若手が辞めてしまう困難な時代のマネジメントをレクチャーする。ぬるいホワイト企業で若手の離職が止まらないのは,成長と働きがいの実感が持てないからだと考察し,必要なのは「働きやすさ改革」ではなく「働きがい改革」だと力説する。働きやすい職場は人事制度で整備できるが,1人ひとりの働きがいを引き出すのは上司の役割だと述べ,3つのステップ(@リアリティショックの緩和,A組織の論理を本人のキャリアに翻訳,B仕事を通じた成長実感をつくる)による対策を提案。改めて傾聴や報連相のポイントにも触れつつ,対話による学習の深化や振り返りを促して成長に導く道筋を示す。上司自身がいきいきわくわくする存在であることを求めると同時に,部下を本気で叱る場合には感情を表出して構わないとも語る。3割ストレッチと小さなキャリアの積み上げや,仕事の目的に立ち返り信じて任せて成果をもたらした「エピソード」も紹介されているので,自社での再現性も期待できそう。

●著者:前川孝雄  ●発行:FeelWorks
●発行日:2024年4月1日  ●体裁:四六版/208頁

人事のためのデータの見方・使い方

 一般に公開されている官民の統計データをピックアップして,7章・48の項目に整理。様々なデータが示すトレンドから,現在日本企業が直面している人事・経営課題を読み解いていく編集構成だ。各項目とも課題に対する「施策事例」がコンパクトに掲載され,人事の打ち手のヒントが把握できる。例えば,労働力人口が減少していくデータを捉え,システム化・自動化によるカバーや,再雇用による働き手の確保によって影響を軽微にとどめた企業の例を挙げている。また,初任給水準の上昇では,いっそジョブ型に着目し人事制度全体の見直しを進めてはどうかと誘う。データの使い方では,統計から算出した労働分配率と,定期的に確認する自社数値とを比較しながら,昇給決定根拠の指標に応用する方法をガイドする。可処分所得・勤続年数別賃金格差・テレワーク実施率・女性管理職割合・有給休暇取得率・労働紛争相談件数・教育研修費といった人事系数値のほか,都道府県別貯蓄額,社長平均年齢なども載せ,広く考える視点を提供してくれている。

●編著者:林 明文  ●発行:中央経済社
●発行日:2024年4月1日  ●体裁:四六版/212頁

新しいリーダーの教科書

 本書は,ディズニーおよびUSJという2大テーマパークで数千人規模のキャストたちを育て上げてきた人材開発のプロの手によるリーダー読本だ。第1章「『リーダー』という仕事」ではリーダーシップの習得と同時に部下・メンバーの心に炎を灯す役割の重要性を訴求。高い視座,エンゲージメントといった「リーダーであり続けるための5つの要素」にまとめている。続けて,“あり方”を理解した前提で,「思考改革」「場づくり」「コミュニケーション」の3つのテーマを章別に詳述している。いずれもポジティブな感情の維持と,その影響力の大きさを説くなど,目の前の実務に追われがちな一般企業のリーダーたちが,分かってはいるけれども全然できていない反省点に多々気づかされそうな要点が並ぶ。リーダーが機能するためのポイントを過不足なく拾い,論理的かつ深い思考の伴った解説が,一貫して親しみやすい文体で記述されている。本書を本気で精読し,凝縮されたノウハウを血肉化できるなら,誰もが本物のリーダーに生まれ変われるはず。

●著者:今井千尋  ●発行:あさ出版
●発行日:2024年4月15日  ●体裁:四六版/187頁

求人募集をしても応募がない・採用できない会社に欲しい人材が集まる方法

 人口減少の激しい地方で人材採用を成功させてきた求人広告のプロが,応用の利きそうなノウハウを明かす。特に採用の成否を決定づける要素として求人原稿の書き方に着眼。型通りの案件記載では会社の魅力は伝わらないと指摘し,4つの軸(企業・仕事・職場・条件)による情報整理とアピールを提案している。会社の魅力を言語化するためには社内に眠るエピソードを掘り出す必要があると述べ「社内インタビュー33の質問」と題した資料を掲載。さらに4つの軸それぞれに五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を組み合わせて現場のリアルを描き出す方法をレクチャーしている。8つの「応募者倍増テクニック」では,カタカナ用語や自慢話を避け,普段使いの言葉,お客さま目線での切り出し方でイメージを伝える方法と成功事例を紹介する。さらに「面接」は,選考の場ではなく応募者が働きたいと意欲を高める機会だと捉え直し,採用広報のプロセスに位置づける発想の転換を求めている。帳票ツールがダウンロードできる読者特典もお楽しみ。

●著者:関根コウ  ●発行:現代書林
●発行日:2024年4月18日  ●体裁:四六版/186頁

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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