労働審判の申し立てが急増
社労士事務所 HRMオフィス 特定社会保険労務士 杉山 秀文
雇用の現場では、さまざまな労務トラブルが起こっています。
トラブルの最終的な解決手段は、裁判ということになるのですが、裁判というのはお金も時間もかかり、労使双方にとって、ハードルが高いです。
その一方で、労務トラブルは近年、個別化・多様化が進んでいます。これまでであれば、労使トラブルは会社と労働組合の団体交渉で解決を図っていました。しかし、労働組合自体の組織率低下、トラブルの個別化といった事情を背景に、このような「集団的労使関係」の枠組みでは、労務トラブルの解決が図れなくなっ
てきているのです。
それに対応して、裁判以外のトラブル解決手段が整備されてきています。そのひとつが、「個別労働関係紛争解決促進制度」。これは、都道府県労働局長による助言、紛争調整委員会によるあっせんという仕組みから成り立っています。これの仲立ちを、特定社会保険労務士がやることも可能です。一番手軽な紛争解決手段といっていいでしょう。
もうひとつが、労働審判制度。これは、労働審判員2名と裁判官で構成する労働審判委員会が、3回以内の審理で解決を図る制度です。
1月5日の朝日新聞夕刊に、この労働審判の申し立てが急増しているという記事が掲載されていました。記事によると、2009年の申し立ては3000件を超え、2年で倍増したとのこと。制度発足(2006年4月)から2009年10月末までに終結した6536件の平均審理期間は74.5日、7割以上が3カ月以内で結論が出たといことです。
制度のねらい通りに運用されていると言っていいでしょう。とは言え、これだけ増えてくると、審理が遅れるケースも出ているようですが。
このような、紛争解決手段の充実は、迅速な解決を可能にする効果的な制度であり、結構な話ではあります。しかし、このことは当然、労務トラブルを公の場に持ち込む手段が増えたことを意味します。その分、労務トラブルが表に出やすくなったわけです。
会社の、労務リスク管理体制の充実が急務と言えるでしょう。
(HRMオフィスニューズレター2010/1/22号より)
HRM Magazine.
|