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今年の新入社員の特徴と活かし方

潟tァーストキャリア 代表取締役社長 若鍋孝司

■今年の新入社員の傾向

 当社は例年,内定者や新入社員対象の研修を行っている。以下に今年の傾向を少し整理してみたい。
 素直でまじめであることは例年通りであるものの,加えて今年の新入社員はまっすぐに集中して,投げ出したりあきらめたりすることなく,しっかり取り組む姿勢が特徴的だった。アウトプットをどんどん出していかなければならないという認識が強い。「失敗を恐れていてもダメ」「大人しくしていても喜ばれない」「自分から出す・取りに行くことをやらないと,認められない」と分かっている彼・彼女たちは,社会で言われがちな批判を収集しており,それを反面教師として行動しようとしているようだ。こうした意識がチーム・クラスの常識となって,全員のアクションとして表出されたとき,インプットもアウトプットも質が高いものとなった。ちなみに,研修ファシリテーターは1 人のよい行動をとりあげ,集団の前で褒めちぎるのではなく,影響力のある人を見つけ出し,怒られてもへこたれない行動力を肯定していく方法をとっている。今年は特にそうしたアプローチが有効に働いたともいえる。

■特徴を活かし上手に導くには

 意識が高いことと,それができることは別問題である。その意欲に対して,どうすればいいかを教えてあげる姿勢が求められる。「やってみろ,ほらできないじゃないか」と突き放すのではなく,1つひとつ順を追って教えた上で,できたところはしっかり認め,その次の壁・課題を提示する。指導する側には「上手に悔しがらせてがんばらせるコミュニケーション」が有効である。つまり,突然レベルの高いものを与えてもイメージができないため,かえって不安を与えてしまう。従って,イメージができる次のステップを提示していくことがファシリテーターや現場の上司・先輩の役割といえる。
 今年の新入社員は情報を理解するスピードが早く,理解できないことはイメージを作るためにしっかり質問をしてくる。また,質問を投げる相手との関係性はよく見ている(言える人,言えない人を分けている)。
 新入社員研修の効果を握る鍵は,新入社員同士の関係性にあった。内定時代から仲がよく,何を言っても許される関係が築けていると,安心して考え,発言し,学びを得ている。内定時代の旅行や採用活動の手伝いなど,共有体験の多さが,結果を左右していたようだ。また,研修単位の人数も極めて重要な要素で,目安として40〜50名が基準になる。全体に従って行動する,1人のよい発言を活かす,といった動きが有効なのは多くても50名までである。

■現場でしっかり育てるポイント

 今年の新入社員は言われたことを一生懸命取り組む姿勢があるので,まずは現場でかわいがられる存在にはなるだろう。しかし,同期に囲まれていた研修から,知らない人ばかりの職場環境に置かれ,改めて自分から関係を作っていく能力にはばらつきがある。きっかけがつかめずに戸惑い続けると,元気に見えた新入社員も精神的に折れる可能性が高い。
 育成のポイントは,新入社員の知っていること・できていること・得意だと思っていることを認めること。自分の存在が承認されたと感じると,本人も“自分を出していい場なんだ”と分かってくる。
 経済環境もあるので,理想と現実の違いを感じたり,やっていることに意味を見出せなかったりしても,突然辞めてしまうことはなさそうである。“もっとできるようになりたい”と純粋に思うため,すぐに役立つスキルの習得と,目的を考える機会を提供するとさらに伸びていくだろう。

(月刊 人事マネジメント 2011年6月号 HR Short Message より)

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