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「自立したプロフェッショナル」を育成する要点

潟vライムタイム 代表取締役 坂本敦子

 企業がこれまで直面したことのない問題にスピード感を持って対処し,厳しい環境を生き抜いていくためには,各組織で一人ひとりのメンバーが自ら考え,タイミングよく行動するという主体性の発揮が重要なカギとなる。メンバーの主体性を引き出し,自立したプロフェッショナルを育成していくポイントについて,今まで実施してきた研修の経験を踏まえてお伝えしたい。

■研修参加者は目的を理解しているか

 研修は,受講者の自立力を促進させ,経営ビジョンを達成するための考え方や効果的な方法・スキルを切磋琢磨する場である。そこで研修のスタート時に自分たちの組織の現状とビジョン,数値化されたゴール(売り上げ目標など)とその意味について受講者同士,自分の言葉で説明し合う場を設けているのだが,思うように話せない状況をよく目にする。厳しい現状を正しく理解している人が意外と少ないのだ。一人ひとりが主体性を発揮し自立しなければ企業の発展はないということは,どの職場でも認識されている。しかし,その出発地点となる組織の現状,ビジョン,ゴールが自分の言葉で語れない(=きちんと理解されていない)という現実がある。
 また,組織のビジョン,ゴールを達成するための研修であるにもかかわらず,「なぜ,今このタイミングで自分がこの研修を受講するのか」が不明確なまま参加している受講者もいる。自ら申し込んで受講するスタイルの研修では,受講者の目的意識も高く学習への意気込みが感じられるが,それ以外の研修では受講者の意欲に温度差がある。
 そうしたリスクを回避し,主体性を引き出すために,「今回の研修を自分でどのように活かすか」受講者自身に目標を立ててもらう時間をとるようにしている。自立のエンジンに火がつくと顔つきや目の輝きが違ってくる。その結果,研修成果も向上する。

■自立を促す研修効果を高める3つの要点

 以上のような経験から,メンバーの自立力を引き出すためには,下記の3 点をタイミングよく実行することが大切であると考えている。
【要点1】
 組織の現状,ビジョン,ゴール(背景,数字の意味も含む)をメンバーが正しく理解するために上司・部下間で密度の濃い対話の場を創る。進むべき明確なビジョン・ゴールを理解すれば,良くない状況でもメンバーは不安感を払拭し,積極的に取り組むようになる。研修の場でも組織の現状,ビジョン,ゴールを共有する時間を創りたい。
【要点2】
 研修受講前に上司・部下間で「なぜ,このタイミングで自分がこの研修を受講するのか」という対話を行い,目標と研修の受講を連動させる工夫をする。また,研修で得た内容を現場でどのように活かすかというアクションプランを上司と立てる。
【要点3】
 メンバーが目標を立てる際に上司は次の効果的な2 つの質問を入れる。
@あなたが○○という目標を立てた理由は何か? その理由が目標達成までモチベーションを維持する軸となる。
A目標が達成できたら,自分にとって,職場のメンバーにとって,お客様にとって,会社にとって,どのようなメリットがあるか? 目標が達成できなかった場合,どのようなリスクが発生するか?
 目標を達成することにより,お客様や会社だけでなく自分にも良い結果が得られることが具体的にイメージできればやる気が向上する。また,達成できない場合に発生するリスクを考えることで着手するスピードもアップする。
 自立したプロフェッショナルの育成には手間暇を惜しまない密度の濃い対話が必要不可欠だ。

(月刊 人事マネジメント 2011年7月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
日本航空鰍ノ国際線客室乗務員として入社。首相特別機(ワシントン訪米、ベネチアサミット)にも乗務。外資系総合化学会社BASFジャパン梶E人事部において採用、人材育成に携わる。1995年、人財育成コンサルタントとして独立。現在、タイミング マネジメント(R)、「決断力」向上、リーダーシップ力強化、チーム力強化、コーチング、メンタリング、キャリアデザイン、プレゼンテーション、CS向上、マナー&印象力向上などの研修・講演で幅広く活動中。産業カウンセラー・心理相談員、経済産業省 独立行政法人評価委員会 委員。著書に『忙しい忙しいと言うわりに成果の出ないあなたのためのタイミング仕事術』(日本経済新聞出版社)ほか。

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