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これからの人材育成5つのキーワード

鰍gR経営コンサルティング 代表 佐藤政人

 人材育成に力を入れる企業が再び増えてきた。機運が高まってはリーマンショックや東日本大震災などの出来事を境に下火になる。ここ数年,その繰り返しであった。欧州危機への不安は残るものの,しばらくは米国景気が回復基調で国内の復興需要も見込める。人材投資の機は熟してきたといえよう。

■社員の特徴と施策はマッチしているか?

 ではその効果は出ているのか? あるいは出そうなのか? 私は企業の姿勢とは裏腹に,投資対効果が期待未満になるのではと危惧している。なぜなら闇雲に突っ走るケースが後を絶たないからだ。
 若年層向けの研修で考えてみよう。今の20歳代前半までの人たちは,ゆとり世代といわれている。「言われたことしかやらない」「打たれ弱い」といった指摘もあり,評判は芳しくない。能力の個人差はさておき,少なくともこの世代特有の特徴がある。だが,それを考慮しない育成方法が散見される。
 

■人材育成を効果的に進める5つのキーワード

 これからの諸環境を考慮し,効果的な人材育成を行うためのキーワードを5つご紹介したい。
@ 強制
 日本企業はグローバル競争で苦戦しており,社員への期待要求レベルは一層高まっていくだろう。教育は挙手方式で意欲のある社員に受けさせるのがよいとされるが,自主性に任せるだけでは時間がない。期待通りのスピードで社員を成長させるには,無理やりにでも教育を受けさせる必要がある。
A 基礎
 ゆとり世代は基礎学力が低いといわれている。社会人常識が欠けているとか,リアルコミュニケーションがとれないという声も聞く。それらが正しいとすれば,本来,学校で身につけるべきことから教えなければならない。またゆとり世代には真面目で型にはまると力を発揮するタイプも多い。仕事の背景,目的,具体的な手順,最終形や効果などをていねいに説明するなど,基礎から「手取り足取り教える」と,それだけ効果は高くなる。
B 体験
 ゆとり世代には秀才タイプが多い(必ずしも学力が高いわけではない)。反面,外で遊ばず,仲間内でミニチュア社会を作ることにも慣れていない。実体験が不足している者には机上の空論で終わらせず,自分の目で見て行動する習慣をつけさせたいところだ。計画的なローテーションを行い,若いうちに幅広い経験を積ませることも大事である。
C 終身教育
 今や70歳現役社会が現実味を帯びてきた。多くの企業が定年と定める60歳はもはやゴールではない。しかも超高齢化社会が進行すると,定年退職後に再雇用される嘱託者も貴重な戦力であり,完全リタイアするまで成長してもらわないと困る。従って,今では珍しい嘱託者向け教育もこれからは適宜,必要となる。昇格・昇進できずにいる滞留者への教育も,先が長い分,重要性は増してくる。
D PDCA
 生産・品質管理の領域でPDCAを回している企業は多いが,不思議と人材育成ではできていない。社員の特徴と施策にミスマッチがあるのは,人材育成のPができていないということ。Cの効果測定も研修受講者へのアンケートだけでなく,受講者とその上司が定期的な効果チェックを行う。それらの結果を研修担当部門が総合的に分析し,次回への対策を打つことで初めてPDCAが回る。
 実はPDCAが実践されれば,@〜Cのキーワードもカバーされる。「PDCAなくして人材育成の効果は上がらない」といっても過言ではない。

(月刊 人事マネジメント 2012年4月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1985年慶応義塾大学商学部卒業後、日本電装(現デンソー)、UFJ総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどを経て、2010年より現職。一貫して人事マネジメント改革や企業の風土・体質改善に関するコンサルティングを実施。日本労務学会会員。『2013年、日本型人事は崩壊する!』(朝日新聞出版)、『若い人財を辞めさせない』『実戦 人材開発の教科書』(ダイヤモンド社)、『人事戦略イノベーション』(同友館)など著書多数。

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