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前向きな新入社員を作るコツ

(株)アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長 兼 CEO 大野順也

■“ナンバーワン世代”と“オンリーワン世代”

 諸説あるが概ね2008年度以降の新入社員は,ゆとり教育を経て成長していることから,「ゆとり世代」と呼ばれている。賛否いろいろあるこの世代を,私は“オンリーワン世代”と捉えている。「ゆとり世代」よりも前の世代は,第二次ベビーブームで比較的年齢別人口も多く,受験や就職活動などの節目で常に競争を強いられてきた。さらに前の世代は,高度経済成長期を知り,成長や競争を前提にビジネス経験を積んできた。この成長や競争を前提に成長してきた世代を“ナンバーワン世代”と私は捉えている。
 「ゆとり世代」は,ゆとり教育という教育制度になぞらえた言葉である。「徒競走では一番を作らないように手を繋いでゴールする」「円周率を3.14ではなく3と教える」など,教育における厳粛性が低下したかのように一部の取り組みを揶揄して表現される場合も少なくない。そもそもゆとり教育の目的とは,個々の興味や関心を中心に,特徴を生かし,伸ばす教育である。つまり,個々の自尊心や個性を重んじられて成長してきた世代が「ゆとり世代」であり,“オンリーワン世代”と捉えるゆえんである。

■“オンリーワン世代”を活かす2つのポイント

 「ゆとり世代」に対しては,「顧客よりも自分のやりたいことにこだわる」「会社の飲み会に参加しない」「ストレス耐性が低い」などと嘆く声も多くある。しかし,ここで少し考えてほしい。「幼少の頃から受けた教育に沿って育った人物像をどのように変えるか」という観点よりも,「マネジメントをどのように変えるか」に目を向けたほうがいたって建設的ではないだろうか。ポイントは2つある。
 1つ目のポイントは,自尊心や個性にフォーカスしたマネジメントの確立である。これまでは幼少の頃の教育の流れから,競争や他者と比較するマネジメントが功を奏してきた。しかし「ゆとり世代」に関していうと,自尊心や個性にフォーカスしたマネジメントが求められるといえる。つまり,新入社員個々の特性や特徴,職務志向や行動に目を向けて,マネジメントすることが求められる。ただし,それは簡単な話ではない。なぜなら,ゆとり世代をマネジメントする層が,概ね常に競争や他者との比較でマネジメントされてきた世代だからである。つまり,常に成長や競争を前提として経験を積んだ世代が,自尊心や個性を重んじる世代をマネジメントすることのギャップが大きいのだ。
 もう1つのポイントは,「新入社員教育」と「現場」のギャップをどうするかである。「ゆとり世代」だけに限らず,全般的にいえる課題である。例えば新入社員研修で「元気よく挨拶をする」ということを学んだ新人が現場に配属され,さっそく元気よく挨拶したところ,先輩社員から「挨拶はいいから,そこに座って待っていて,あとで指示するからさ」などと言われたらどうだろう。恐らくこの新入社員は次から元気よく挨拶をすることはないであろう。
 ここで考えてほしい。貴社で上司・先輩社員にあたる方々は,新入社員個々の職務志向や強み・弱みを理解しているだろうか。また新入社員研修で学んだことを,現場で浸透・定着させる取り組みを齟齬なく実施できているだろうか。

■新入社員教育と併行してマネジメントの変革を

 つまり,前向きな新入社員を作るコツは,本人たちの資質や教育カリキュラムの内容だけではなく,現場の上司や先輩,また教育と現場との連携の在り方にあるのだと思う。問題や課題は必ず2つの物事の間に発生する。新入社員側だけではなく,マネジメント側を変革させることも念頭において施策を打つ必要があるのだ。

(月刊 人事マネジメント 2014年11月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1974年生まれ。大学卒業後、株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツコンサルティング株式会社(現デロイト・トーマツコンサルティング株式会社)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事。2006年1月に「株式会社アクティブアンドカンパニー」を設立し、代表取締役に就任。現在に至る。

>> 株式会社アクティブアンドカンパニー
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