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Credoの新しい価値に要注目

日本クレド(株) 代表 吉田誠一郎

 Credo(クレド)はラテン語で「信条」を意味する。企業の理念や価値観を従業員と共有するためのマネジメントツールとして多くの組織で導入されるようになって久しい。エンゲージメントを高め,業績向上,CS / ES,コミュニケーション,コーポレートガバナンスや倫理観の醸成等にメリットを創出し脚光を浴びている。そのCredoを人材育成戦略に活用する新しい動きが出てきたのでご紹介したい。

■Credoと企業理念は違う

 先日ある企業からCredo開発の依頼を受け,ミーティングを持った。同席された経営幹部からは「正社員だけではなく,契約社員やパートタイマーにも自社へのエンゲージメント(愛着心)を高めるためにCredoを活用したい」とのお話があった。
 厚生労働省によると2013年度の企業における非正規雇用労働者比率は35%を超え,今後も増え続ける傾向だ。その彼らに対して本当に正社員と同じエンゲージメントを求めるべきなのかと考えながら,この企業の契約社員の方たちと議論を試みた。すると彼らからは「従来の理念と違い,Credoのような文章を指針として仕事ができるならば,それは非常にありがたい」「自分のスキル向上につながる内容が盛り込まれている」といった意見が聞かれた。つまり経営幹部が考えている会社へのエンゲージメントを高める手段とは少し違う捉え方を,彼らはしていたのだ。

■Credoを“仕事の方針書”と位置づける

 この議論の最中,私はあることを思い出した。それは現在,業績好調の菓子メーカーであるカルビーの松本晃会長のお話である。松本氏はジョンソン・エンド・ジョンソン社長を経て2009年にカルビー会長に転身した。ジョンソン・エンド・ジョンソンといえば,Credoに基づくマネジメントを70年も前から実践するグローバルな医薬医療品メーカーであり,全世界の10万人超の従業員がCredoを実践している。その会社で社長を務めていた松本氏は,カルビーへの転身後もCredoをほぼそのまま重用しているという。松本氏は「Credoはマネジメントの最も優れたドキュメント(方針書)だ」と述べており,Credoが企業組織を越えて横断的,普遍的に使えることを示唆している。
 つまり,Credoはエンゲージメントの喚起というより,仕事を高度化するために機能しているのだ。これからさらに増えるであろう非正規雇用の従業員に対して,「自社の価値観を大切にしてほしい」とエンゲージメントを訴えても限界がある。それよりも「これから実践するCredoは, あなたのWorkLifeの価値を高めるためのツールです」と説いたほうが,前向きな興味を示すはずだ。

■エンゲージメント型からSelf Growth型の人材へ

 実は,この考え方は正規雇用の従業員にも当てはまる。これまでの企業理念はある意味「憲法」に似て,自社で働くからには暗黙裡に従うものと認識されがちであった。それを転換し「Credoはユニバーサルなものであり,あなた自身のWork LifeやSelfGrowth(自己成長)を高めるために存在する」と打ち出したほうが納得感が広がる。そう考える企業にエンゲージメントが生まれやすいことも想像できるだろう。
 これからの時代は「Self Growth」が人材育成のキーワードになる。所属する企業への貢献と同時に,自身の成長を求める人材が特に若い層を中心に増加してくる。そのとき,従来のトップダウン型の企業理念ではなく,Credoのような価値基準や行動指針として自分を成長させる“方針書”が必要となるだろう。当然それは企業の業績向上にも寄与するマネジメントツールにもなると考える。

(月刊 人事マネジメント 2014年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1968年福岡出身。大学卒業後、中堅中小企業を対象にした日本有数の経営コンサルティング会社「日本経営合理化協会」で、 経営企画・事業プロデュースにあたる。徹底した現場主義を貫き、今まで約500人のオーナー社長に接する。ビジネスの現場に豊富な人脈を持つ。

>> 日本クレド株式会社
 http://www.j-credo.com