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コンサルティングとコーチングの接点

ビジネスコーチ(株) 常務取締役 グローバルタレントソリューション担当 吉田 寿

■四半世紀ぶりのチャレンジ

 私事で恐縮だが,最近,四半世紀ぶりに所属組織を移るという選択をした。これまでは,組織人事分野を専門とするコンサルティングを手がけてきた立場にある。ビジネスの世界には,さまざまな領域のコンサルタントが存在する。なかでも花形は外資系ファームに代表される戦略系コンサルタントだろう。しかし,実際には組織人事コンサルティングに対するニーズは極めて高い。1990年代以降のバブル崩壊後の状況は「失われた20年」と称されたが,組織人事コンサルの世界は,この間,決して失われてはいなかった。むしろ,環境変化の要請から,安定的に需要が見込まれる優良ドメインであった。
 そこを離れて新たなチャレンジをするには,それなりの理由がある。

■人事制度改革だけでは不十分

 25年にわたる経験を通じて,組織人事コンサルティングには一定のサイクルがあると感じている。それは,@人事制度改革→A新制度の導入・定着化→B人材開発→C組織開発,の順番で一定のサイクルを描くという仮説である。
 しかし,多くの場合,制度改革から新制度の導入・定着化支援までで力尽きてしまい,人材開発や組織開発にまでつながるケースは稀だった。プロジェクトを担当するコンサルタントも,制度改革や制度の詳細設計には長けていても,人材開発や組織開発の領域には疎い者も少なくなかった。人事制度改革の後,新制度を適正に運用させようとすると,制度運用面でのソフトスキルが必要となる。それは,マネジメント・スキルでありリーダーシップ,コーチングやファシリテーションに関するスキルである。もっと具体的にいえば,目標管理の仕組みを適正に回せるだけのマネジメント・スキルであり,目標設定面談や評価面談の際のコーチング的アプローチであり,自分の役割や達成すべき目標を適切に自覚させる方向へと導くためのファシリテーション・スキルである。しかし,このあたりのスキルの習得について,これまでの組織人事コンサルタントは不十分だった(人事制度の詳細設計や評価者研修の実施で,まがりなりにも飯が食えてしまった事実も大きい)。

■「制度改革」から「運用」へ着目点がシフト

 原点に立ち返れば,何のための制度改革か? ということだ。人事部門の場合,人事制度の改革が目的化してしまっているケースが実に多い。しかし,制度を変える最終目的は,会社をあるべき方向に変えること。つまり,企業変革を実現するためのファースト・ステップとして人事制度の改革がある。その先に待つプロセスやステップの見通しを持つことが,人事担当者にとっては極めて重要だ。
 そこで着目されるのが,コーチングの領域である。コーチングは,当初,部下指導のための新しい手法として紹介された。しかし,昨今では,1対1のコーチングから組織やチームに対するコーチングへ,さらには経営幹部や次世代リーダー育成のためのエグゼクティブ・コーチングへと裾野を拡げている。組織内部の暗黙知を形式知化させるためのファシリテーターをコーチが担ったり,新しいビジネスモデル探索のためにコーチが一役買ったりといった状況も出てきている。ここに,企業変革に向けたコンサルティングとコーチングとの接点を感じている。これからの組織人事コンサルタントは,状況に応じてコンサルタント,コーチ,ファシリテーターといった,「役割複合主体」のミッションを果たす場面が増えてくるはずだ。
 人事担当者も,この変化を見据えてコンサルタントを活用すべき時代である。

(月刊 人事マネジメント 2015年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1959年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパルを経て、2015年1月より現職。“人”を基軸とした企業変革の視点から、人材マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などの組織人事戦略コンサルティングを、グループかつグローバルに展開している。BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ。中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。主な著書に、『世界で闘うためのグローバル人材マネジメント入門』(日本実業出版社)、『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)、『企業再編におけるグループ人材マネジメント』(共著、中央経済社)、『ミドルを覚醒させる人材マネジメント』、『人事制度改革の戦略と実際』、『人を活かす組織が勝つ』(以上、日本経済新聞出版社)、『社員満足の経営』、『仕事力を磨く言葉』(以上、経団連出版)、『人事超克』、『未来型人事システム』(以上、同友館)など。その他論文、新聞・雑誌への寄稿、講演多数。

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