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職場にモチベーションを伝染させよう
(株)JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所長 ■「あの人すごい。私もがんばろう!」
スポーツ番組などで選手が必死にトレーニングする様子に刺激を受け,「私もがんばろう」と背筋が伸びる。多くの人が経験する感情ではないだろうか。女子サッカーなでしこジャパンのメンバーが,決勝戦で最後まであきらめずに戦う様子には,SNS等で感激の言葉とともに,「元気をもらった」「私もがんばらなきゃ」というコメントがアップされた。選手のモチベーションが視聴者に伝染しているのだ。モチベーションの伝染は,職場でも起こる。同僚が気合を入れて仕事をしている姿を見ると,つられて一所懸命仕事をする。 ■知らないうちに伝染して業績も上がる
モチベーションの伝染は,無意識のうちに起こることもある。本人に自覚がなくとも,周りから影響を受けて,作業の遂行速度がアップしたり,多くの量をこなしたりするのだ。がんばる社員が1人いると,周りの社員も知らず知らずがんばるようになる。たとえ「いや別に,あいつががんばってるとか,そんなの関係ないっすよ」と口にしていたとしても。 ■マイナスの感情が伝染するリスクも
ただし,低いモチベーションも伝染する。モチベーションの低い社員が1人いると,周りのモチベーションまで低下してしまう。1人の低いモチベーションが,職場全体に広がれば,会社の経営を脅かしかねない。こうしたマイナスの伝染を防ぐ方法の1つが目標へのコミットメントだ。「無関心の伝染」に関する研究では,目標を強く意識している人には,伝染が起こらなかった。さぼる人がいると,一所懸命やっているのがばからしくなり,自分もさぼりたくなる。しかし,自分の目標がしっかりあり,そこに照準を定めていれば,さぼり社員など視界に入らない。目標の重要性を改めて感じる結果である。 ■仲間意識の一体感が伝染を加速させる
伝染を促進させる要因の1つは,類似性だ。モチベーションの高い人を見たとき,「自分と似ている」と思うと伝染が起こりやすい。類似性のなかでも特に「同じグループ」という意識は伝染を促進させる。これは,職場での仲間意識や一体感と重なる。「私と同じ仲間のあの人が,こんなにがんばっている」という認識が大切なのだ。一方,自分と“全く関係ない人”の場合は,どれだけがんばろうと何ら影響しない。同じ職場内でも,仲間意識や一体感が薄ければ,同僚でも“全く関係ない人”になってしまう。その場合は,がんばる人がいても,モチベーションの伝染は起こりにくい。
(月刊 人事マネジメント 2015年8月号 HR Short Message より)
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1993年ジェイティービーモチベーションズ創立時より参画。以来、ワーク・モチベーション(仕事意欲)の調査、研究、コンサルティングに携わり、モチベーションとキャリア開発の視点から、個人と組織の活性化を提案。2013年6月に、ワーク・モチベーション研究所所長に就任。2015年4月より、明星大学特任教授。筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士前期課程修了。カウンセリング修士。主な著書に『事例に学ぶ!モチベーション・マネジメント −組織活性化の処方箋』(経団連出版)、『やる気が出なくて仕事が嫌になったとき読む本』東洋経済新報社、『はたらく女性のための「転機」をチャンスに変える本』河出書房新社、『「職場で“モテる”社会学」講談社、『できる人の口ぐせ』中経出版、など多数。 >> 株式会社JTBコミュニケーションデザイン http://www.jtbcom.co.jp/ >> 明星大学 http://www.meisei-u.ac.jp/ |