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考えて動く人財の増やし方

エール(株) 代表取締役 與良昌浩

 「受け身な社員は,どうしたら変わるのでしょうか?」指示待ち,他人任せ,言われたことしかやらない……。組織開発の仕事をしていると,こういった相談をよく受けます。中小企業でも大企業でも共通する“人事部(人材育成)のお悩みごと”です。こういった受け身な社員が人事部など外部からの働きかけで本当に変わっていくのか? そう感じた方もいると思いますが,しかるべき施策を講じ,必要な環境を整えていけば,徐々に変わっていきます。ポイントは,「何をするか」の前に,社員に「どういう状態になって欲しいか」から考えることです。

■自ら考えて動く人財が持っている3つの「感」

 担当業務を自分事として捉え,自分で考えて行動できる人は,次の3つの「感」を持っています。
 1つ目は『自己肯定感』です。職場において,上司や同僚から「大切にされている」と感じられているかどうか。これがないと,その組織への所属意識が低くなり,業務も他人事となってしまいます。
 2つ目は『成長実感』です。「この仕事を通してどうなりたいか」といった目的を持ち,かつ目的に向かって進めていて,その過程で「できること」が増えていると日々感じ取れているかどうかです。
 3つ目は『貢献実感』です。「この仕事は誰の何に役立っているか(仕事の意義)」の自分なりの答えを持ち,同時に,職場や他部署の誰かから感謝されたり,認められたりされているかどうかです。
 これら3つの「感」を持てる職場にしていければ,自ら考えて動く人財が増えていきます。では,どうすればそういった職場にしていけるのでしょうか。

■社員の変化を促進する2つのキーワード

 1つ目は『内省』です。内省とは,日々の業務や現場から少し離れて,自分のこれまでの経験や実績を振り返りながら未来を考えることです。例えば,仕事における過去の経験や実績の意味を考える,改めて仕事の意義や目的を考えるなどです。内省する機会を増やしていくことが,社員の自己理解を促し,モチベーションの向上につながります。ちなみに,内省する機会を持つことなく仕事をし続けると,「担当業務が他人事になる」「不平不満ばかり言う」「他責になる」といった社員が増えてしまいます。
 2つ目は『応援』です。職場の人間関係はどうしても評価がつきまといます。多くの人は「まずは自分の評価を高くしたい」と思い,他人に(結果として)無関心になってしまいがちです。そうなると,職場で孤立感を抱く人も出てきてしまいます。一方,理想の職場では,働く人たちが互いの目的や目標を知っており,その達成に向けて応援し合えています。そういった職場では,仮に困難が訪れても「最後は誰かが助けてくれる」と職場の仲間を信じることができるはずです。こういった職場文化を作るには,意識して互いを応援し合うことが必要です。
 『内省』と『応援』を職場に組み込むことで,そこで働く人たちの自己肯定感や成長実感,貢献実感が育まれていきます。

■考えて動く人財を増やし続ける鍵は“仕組み”

 弊社の支援先では,内省するための対話会や日々の仕事を振り返って意味づけする社内SNSを展開しており,内省と応援が日常的に行われる仕組みを導入しています。その結果,意味や目的を考える社員,自発的に行動する社員が続々と増えてきました。さらに,周りに関心を持ち協力し合う社員も増え,チームワークも高まり,業績が上がってきた企業もあります。「受け身な社員が人事部などの外部からの働きかけで本当に変わっていくのか?」と冒頭に書きました。その鍵はいかに組織のなかに仕組みを埋め込むかにかかっています。

(月刊 人事マネジメント 2015年11月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
早稲田大学卒。伊藤忠商事、アクセンチュア戦略グループ、ユーエスエスを経て、組織風土改革を支援するスコラ・コンサルトに入社。2013年、株式会社もくてきを設立、代表取締役に就任(2016年4月、エール株式会社んい社名変更)。組織コミュニケーション変革、組織開発のコンサルティング事業を展開。2015年、組織開発をより多くの人に届けることを目的に、日本初の組織開発クラウドサービス「YeLL(エール)」を立ち上げる。大手企業での導入も進んでいる。著書『他人の思考の9割は変えられる』(マイナビ)、『決める技術』(秀和システム)。

>> エール株式会社
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 http://www.yell4u.jp