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ソーシャルリクルーティングの失敗に学ぶ
グローイング 代表 平井俊宏
ソーシャルメディア(SNS)を活用して人材採用の成果を上げるには,過去の教訓が参考になる。米国でSNSを活用した採用活動が「ソーシャルリクルーティング」と呼ばれていた2010年頃,ちょうどFacebook日本支社の設立前後に新しい採用手法,特に母集団形成の手法として日本でも注目された。具体的にはSNSを通じて,顕在・潜在の候補者と関係性を築きながら,自社への興味を喚起し,またブログなどで継続的に情報発信し,応募につなげていくという採用アプローチである。当初,ソーシャルリクルーティングは採用コストを抑制する母集団形成(応募喚起)手法として期待されたが,実は,以下のような3つの理由からその勢いは薄れている。 ■SNSを活用した採用が衰退する理由
【衰退・1つ目の理由】 ソーシャルメディア内のコミュニケーションに採用担当者がうまくフィットできなかった。LinkedinやWantedlyのような採用活動を目的の1つとしたものを除き,SNSはそもそもユーザー同士が気の向くままにつながったり(もしくはつながりを解除したり),自由に発信・受信できる場である。採用担当者がつながりの輪に積極的にリクルート目的で入ってくることでユーザーが構えてしまい,コミュニケーションの場をぎごちないものにしてしまうケースが散見された。もちろん,うまく加わることのできた採用担当者もいたが,かなり少数であったように思う。結果としてナビ媒体と同様にほぼ一方的にしか情報発信できないアカウントがFacebookなどで多く見受けられた。 ■自社の魅力とコミュニケーションスキルが基本
その後も様々なSNSが登場している。しかしながら,Linkedinを使っても,Lineを使っても,コンテンツマーケティングのエッセンスを生かした採用ブログを構築しても,採用活動の本質要素,つまり「魅力がなければ人は集まらない」「コミュニケーションによる関係性の構築」による興味喚起・応募喚起・入社動機形成は変わらない。ダイレクトリクルーティング(事業者が持つ,候補者データベースへの直接アプローチ),リファラル採用(紹介・縁故)と一見,新しそうな採用手法が現れても本質は一緒である。新しい採用手法やソーシャルメディアが登場すると,自社の要件に合う応募がヒュッと集まる“魔法の杖”を期待してしまうかもしれないが,「ソーシャルメディアを使えば応募者が集まる」というのは幻想に過ぎない。「ホームページを作れば集客できる」「ERPを導入すれば業務が効率化する」という一昔前のIT導入時の失敗と同じである。
(月刊 人事マネジメント 2017年8月号 HR Short Message より)
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アーサーアンダーセン、NTTデータ経営研究所、人材開発系ベンチャー等で大手メーカ、商社、SI会社、金融、小売、販売会社、監査法人等の多岐にわたるクライアントにコンサルティングを実施。その後、独立系再生ファンドに籍を移し、地方リゾートホテルのターンアラウンドマネージャーとして活動。経営全般のコンサルティング・実務経験があり、多様な視点で人事・採用施策を検討できるのが強み。人事領域では各種制度を策定・導入し、採用においてはノウハウを活かし、国内一流ホテルの総支配人クラスから若手中堅クラスまで100以上のレジュメを集め、長期滞在型有名リゾートや、都内一流レストランの即戦力を多数採用・招聘した。直近では人事責任者としてネット系ベンチャーにて上場準備の一環としてゼロから人事部門の立ち上げを行う。独立後、採用適性検査『Growing』の企画/開発・販売の他、応募が集まらない企業を人気企業にする人事・採用コンサルティングに従事する。 >> グローイング/採用力強化TV http://jinji-saiyo.com/ |