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テレワーク時代の能力開発とは?

(株)グロービス マネジング・ディレクター 花崎徳之

 2020年のオリンピックイヤーを迎える今,テレワークを実施するための人事制度の整備や各種ITツールの導入を進めている企業のお話を頻繁に耳にするようになりました。日本企業の働き方改革もいよいよ本番を迎え,時間・場所を柔軟に選択できるテレワークが注目されています。
 一方,テレワーク環境下でも高い生産性を維持しながら業務を遂行するために,「従業員に対してどのような能力開発を行うべきか?」といった観点にまで目を向けている企業はどれだけあるでしょうか。また,テレワークが本格化し,勤務場所や勤務時間など働き方が多様化する状況においては,能力開発の機会を従業員に平等に提供していくという視点を踏まえ,「どのような手法で能力開発を支援するか?」にも目を向ける必要があると考えます。

■テレワーク時代に求められるスキルとは?

 当然ながら,テレワークが本格化すると遠隔でのコミュニケーション機会が圧倒的に増えます。これまで当たり前に Face to Faceで行っていた朝礼や会議,周囲のメンバーや上司へのちょっとした相談などを,今後はオンライン上(チャット,メール,WEB会議等)で行う必要があります。従来は,相手の表情やその場の雰囲気を踏まえたコミュニケーションを行いながら,上手く周囲に“汲んで”もらえたのかもしれません。しかし,オンラインツールが発達したとしても,微妙な空気感や表情から察し合うような情報伝達には限界があります。今後は自分自身の考えを整理し,構造化し,相手に伝わるように言語化して発信する力(論理思考)が,これまで以上に重要になります。
 また,マネジメントを行う管理職の場合は,オンライン上という制約あるコミュニケーションであっても,メンバーの状態を把握し,状況に応じた適切なアドバイスを行い,メンバーをモチベートしながらリードしていくことが求められるでしょう。上述の論理思考に加え,より高度なリーダーシップやオンライン上でのファシリテーションスキルなども重要になります。

■テレワーク時代に適した能力開発手法とは?

 では,こうしたテレワーク時代に求められる能力をどのように開発すればよいのでしょうか? これまで従業員の能力開発といえば,本社の会議室などで実施する集合研修が一般的でした。しかし,勤務場所も様々,勤務時間も多様なテレワーク時代において,対象者全員を1箇所に集めるような従来の手法ですべての能力開発を行うことは,あまり現実的ではありません。そもそもテレワークの趣旨からも矛盾します。一方で,最近は場所や時間を選ばないeラーニングや動画配信サービスの導入が進んでいますが,知識のインプットに偏ってしまい,実践を意識したアウトプット中心のトレーニングには不向きです。
 そこで,近年注目を浴びているのが,WEB会議システムなどのテクノロジーを活用した能力開発手法です。場所を選ばないメリットを確保しつつ,動画や講義録画を一方的に視聴するだけではなく,同時双方向のライブ形式で議論やチャットを行い,実践力を高められることが特徴です。
 当社では,2014年にこの手法を用いたオンラインMBAプログラムをスタートし,その後,企業内研修やオープンスクールなどの法人向けサービスへ拡大してきました。特に,オンライン型の企業内研修はここ3年でクラス数が30倍となっており,企業の関心の高さがうかがえます。テレワーク時代に合わせ,テクノロジーを活用した実践的な能力開発を取り入れてはいかがでしょうか。

(月刊 人事マネジメント 2019年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
早稲田大学商学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院EDP(Executive Development Program)修了。大学卒業後、第一生命保険相互会社(現 第一生命保険株式会社)に入社。法人ビジネスの戦略策定、営業企画、営業組織マネジメントなどを担当。グロービスに転じ、グロービス・コーポレート・エデュケーション(GCE)部門において、企業の組織開発・人材育成支援に従事。その後、ディレクターとして企業向けサービス開発チームのリーダー、セールス&マーケティングチームのリーダーを務め、現在はGCE部門マネジング・ディレクターを務める。講師としては、企業研修・エグゼクティブスクール・グロービス経営大学院において、マーケティング・経営戦略・論理思考・リーダーシップなど幅広い領域ならびにアクションラーニングの登壇多数。また、グロービスのマーケティング研究グループのリーダーとして、同領域のコンテンツ開発・講師育成を統括している。共著に「グロービスMBAマーケティング」(ダイヤモンド社)がある。

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