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企業内大学のすすめ

(株)タナベ経営 東京ファンクションコンサルティング本部長 川島克也

■全員が活躍できるために“学び方改革”を

 今,企業人事を取り巻く環境で最も大きなインパクトは,「働き方改革」です。周知のように昨年4月より働き方改革関連法が順次施行され,企業はこのテーマへの対応を早急に求められています。このような環境下で問われている課題の本質は,生産性の向上です。これまで生産性の低い人は,残業することで能力の高い人になんとか追いつこうとしていました。時間投入という努力で能力不足をカバーしてきたのです。しかし,「働き方改革」が進行する今は「夜中まで会社に残る」「休日に仕事を持ち帰る」という考え方は決して許されず,否応なく全員が生産性を引き上げる必要性に迫られています。
 生産性を高めるためには“学び”が欠かせませんが,これからの時代は,幹部・マネジャーを育成すれば,あとは彼らが部下たちを育ててくれるという仕組みが機能しません。幹部も部下も1人ひとりが高い生産性を維持できるリテラシーを持ってこそ,組織の生産性も引き上げられるのです。全員教育による全員活躍の時代であり,それを実現する「学び方改革」が求められています。

■メリットの多い「企業内大学」に要注目

 従来の階層別・画一的な社員研修に限界があるとすれば,企業が社員に“学べる場”を提供し,社員が自主的に学びたいカリキュラムを選んで受講できる制度「企業内大学」は1つの解決策になります。リアル(集合教育)とネット(動画学習)を組み合わせた人材育成の仕組みはより効果的です。社員に身につけてほしい力が何かによってカリキュラムは異なりますが,先行する事例では以下のようなテーマが多く見受けられます。
・経営ビジョンや理念,方針の社員への浸透
・会社概要や業界知識,商品知識の習得
・製造業の機械加工作業やサービス業の接客応対の仕方などの現場実務
 最近では,激しく変化する技術革新やマネジメント等の専門知識やスキル習得のツールに留まらず,コアコンピテンシー(高い業績を達成する人材の行動特性)の理解浸透など人事戦略上欠かせないシステムへと進化してきています。
 進め方では,リアルの集合研修を実施したうえで,クラウド学習(動画)で定着を図っていく方法が典型的です。これなら,国内外どこにいても,パソコン,タブレット,スマートフォンといったツールを用いて,営業のスキマ時間や通勤途中などいつでも学べます。さらに,従来ありがちだった「研修のその日は予定が入っている」「研修会場が遠くて通えない」「育児が大変で研修には参加できない」といった課題も解消し,学びの機会をいつでもどこでも継続的に提供できます。つまり「学び方改革」と「働き方改革」はつながっているのです。
 また,人を育成する制度やシステムがある企業は,「人を大事にする会社」というイメージを持たれます。新卒・中途いずれの応募者も,入社後,自分はどのように活躍させてもらえるのか,ステージアップを支援してもらえるのかを重視します。採用難の今,企業にとって社内大学の仕組みは極めて有効なブランディングツールになります。
 タナベ経営が推奨する企業内大学(アカデミー)は,受講者が動画を見るだけではなく,社内の幹部・中堅社員が講師となって教える側に立つOJTの仕組みを取り入れています。このような運営で,教え合い学び合う風土が形成され,組織活性化にもつながっています。企業内大学の設立を通して学び方改革を進め,生産性向上,そして企業の持続的成長をぜひ実現していきましょう。

(月刊 人事マネジメント 2020年2月号 HR Short Message より)

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経営全般からマーケティング戦略構築、企業の独自性を生かした人事戦略の構築など、幅広いコンサルティング分野で活躍中。企業の競争力向上に向けた戦略構築と強みを生かす人事戦略の連携により、数多くの優良企業の成長を実現している。

>> (株)タナベ経営
 https://www.tanabekeiei.co.jp/