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リーダーの“思考する力”を鍛えよう

(株)フィールドマネージメント・ヒューマンリソース 代表取締役 小林 傑

 1人ひとりがリーダーシップを発揮する時代が到来しています。リーダーシップの定義は様々ですが,「ゴールの達成に向けて何をすべきか考える(=思考する力)」「周りを動かして実行する(=動かす力)」という2つの要素はリーダーに欠かせません。しかし,リーダーシップが語られる際は,メンバーをいかに動機づけるか,どうコミュニケーションをとるか,など“動かす力”にフォーカスされがちです。確かに考えても実行しなければ意味はないのですが,考えずに実行することはさらに問題です。まず“思考する力”を強化するのが正しい順番といえます。ちなみに“思考する力”とはどういうことかが抽象的なので定義しておきましょう。思考する力とは,「その目的を正しく捉えて,ゴールを設定し,時間的制約を踏まえたうえで,必要十分な拡さと深さをもってスピーディに答えを導き出すこと」です。

■なぜ“思考する力”が不足しているのか?

 “思考する力”が不足している大きな理由は,思考する機会や回数が少ないからです。
 例えば,職場で新入社員は「言われたことをできるようになる」から始めるため,自ら思考する実践をあまり積むことなく,成長過程で指示に従うことに慣れてしまいがちです。そして初めてマネジャーになる際は,部下を持ち評価者になることが一番大きな環境変化であるため,つい部下のマネジメントばかりに意識が向いてしまいます。自部署のミッションを果たすために何をどう実現すべきか道筋を考えるのが,本来マネジャーとしてやるべきことなのに,部下とのコミュニケーションから考えてしまうのです。多くの企業では,思考する方法論を学ぶ場として問題解決やロジカルシンキング等の研修を実施していますが,実践の場でそれを活用できている人はごく少数です。筋力トレーニングの方法を教わっても筋力はつかないのと同じで,“思考する力”も,方法論を理解しただけではスキルは高まらず,実践で活用しなければ使えるようになりません。

■“思考する力”を鍛える3つのポイント

 思考の方法論は,書籍や研修で学習できるため,学んだうえで,“思考する力”を鍛えるための大事なポイントを3つご紹介します。
@思考する機会を圧倒的に増やす
 常に「本人が何をどう考えているか」を周りから問い続けるようにします。主には上司が部下に,先輩が後輩にという関係で問うことが多いと思われますが,上下関係に関わらず問う機会を社内に作りましょう。また「何をすればよいか」という施策にフォーカスされがちですが,できるだけ「目的は何か,課題は何か」を中心に上流を問うように導くことがポイントです。
A必ずフィードバックする(またはもらう)
 自分で考えた結果に対して誰からも何のリアクションも得られなければ,考えても意味がない,何が正しいのか分からない,と思考自体を止めてしまいます。本来は上司や先輩が担うべき役割ですが,仮にそれが難しい場合も,誰かがフィードバックする仕組みは重要です。部下・後輩の側も,上司・先輩が忙しければ,思考することが得意そうな人を自ら探してフィードバックをもらいに行くぐらいの行動が必要です。
B上記2つのサイクルを繰り返し続ける
 思考力は前述した通り「何度か考えてみた」くらいでは身につきません。思考して導き出す答えに唯一解はないだけに,筋力トレーニングのように繰り返し実践で鍛えていくしか方法はないのです。
 これら3つのポイントを踏まえたうえでリーダー育成の仕組みを考えることが不可欠です。

(月刊 人事マネジメント 2020年3月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
慶應義塾大学卒業。JTBを経て、リンクアンドモチベーションにて執行役員として組織人事コンサルティングに携わる。退社後、新機軸の経営コンサルティングファームであるフィールドマネージメントに参画。マネージングディレクターとして、多業界のマーケティング/ブランド/新規事業/組織改革プロジェクトに従事。2015年にHR領域を主軸とするグループ会社として、フィールドマネージメント・ヒューマンリソースを設立し代表を兼任。株式会社カオナビ社外取締役。

>> (株)フィールドマネージメント・ヒューマンリソース
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