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プロジェクトマネージャーを支えるPMOの活用を

(株)マネジメントソリューションズ(MSOL) 代表取締役兼CEO 高橋信也

 これからの時代に企業が生き残っていくには,プロジェクト型経営がカギになります。垂直統合,水平分業といったビジネスモデルの論点もありますが,事業をプロジェクト型にしていかないと明確な数値検証ができず,経営判断の機会損失になりかねません。プロジェクト型経営は期間設定,収支,人材,開発計画とすべてのKPIが明確なため経営判断が迅速にできます。また,働き方の視点では,最適なリソース配分で推進していくためロス(想定外の残業等)を最小限に抑えることができます。例えば,テレワークは移動時間のタイムロスやオフィススペースのコストを合理的に最小化できるので,プロジェクト型経営にマッチした選択といえるでしょう。

■PMのスキルは経営の期待に応えているか?

 プロジェクト型経営を進めていくうえで重要な点は,各プロジェクトの責任者であるPM(ProjectManager:プロジェクトマネージャー)の存在です。PMは,決められた期間内に決められた予算でプロジェクトを推進し,目的・成果を達成していくキーマンとなります。スキルとしては「PMBOK」(ProjectManagement Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)に定められた10の知識エリアの理解と実践が求められます。10のエリアとは,@スコープ,Aスケジュール,Bコスト,C品質,D資源,Eコミュニケーション,Fリスク,G調達,Hステークホルダー,そして,I統合マネジメントです。これらを理解したうえで現場へ適応させていく実践力,プロジェクトを推進するリーダーシップ,さらにプロジェクトの関係者をまとめていく調整能力も必要で,高いレベルの素養が求められます。
 以前にネオマーケティング社が実施した調査結果から改めて注目したいポイントがあります。それは,経営サイドと現場の認識のギャップです。経営サイドで「教育をしている」と考えている人は約60%だったのに対し,プロジェクトメンバーで「教育されていない」と答えた人は約70%となり,矛盾した結果が出たのです。経営サイドが必要と感じているスキルと現場サイドで必要とされているスキルの認識の違いからこのようなギャップが生じていると推察されます。これは,人財不足の時代に内部で無理にPMをアサインしたが,現場で必要なスキルが身についていないために結果が出せないという,しばしば起こりがちな現実を象徴しています。

■PMとメンバーを支えるPMOに注目

 スキルの習熟度に課題があるとはいえ,PM本人は日々の実務に忙しく,彼らに対しては何らかのサポートが望まれます。そこで,一歩進んだ企業では,PMO(Project Management Offi ce)を取り入れています。PMOは,PMをはじめ,プロジェクトに関わるメンバーのパフォーマンス発揮をサポートして,計画通りにプロジェクトを推進する役割を担います。PMOはPMの伴走者・良き相棒であると同時にプロジェクトマネジメントのプロフェッショナルでもあります。社外のプロを参画させる方法なら,仮に社内PMのマネジメントスキルが不足していたとしても,社外PMOが補いサポートすることでプロジェクトを炎上させずに成功に導くことができます。
 プロジェクト型経営が増えれば増えるほどPMOの活躍の場も増えていくでしょう。実際,私たちMSOLは多くのプロジェクトにPMOとして参画し,プロジェクトを成功に導いています。PMOの普及に伴って,企業経営が安定し,より多くの収益を上げて経済社会のHappinessが創出されていくことは間違いありません。それは,「Managementの力で社会のHappinessに貢献する」という私たちのミッションの具体化でもあるのです。

(月刊 人事マネジメント 2020年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
福岡県出身。上智大学経済学部卒。大学卒業後、アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。 コンサルタントとしての外部の目からだけではなく、内部の目でマネジメントを経験したいとの思いから、SONY Global Solutionsへ入社。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。2005年、株式会社マネジメントソリューションズを設立し、現在に至る。

>> (株)マネジメントソリューションズ(MSOL:エムソル)
 https://www.msols.com/