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目標管理を成功させる秘訣

(株)アクティブ アンド カンパニー コンサルティング本部 永島正志

 「目標管理」という言葉自体は,1950年代頃から使われ始め,多くの企業で導入・運用されています。ある統計では,1989年には目標管理の導入率が36.3%だったのに対し,2018年には81%に上がっています。導入が進む一方,有効に機能しないことを悩む企業が多いのも現状です。

■目標管理がうまくいかない理由

 多くの企業で目標管理が機能していない要因は,以下のように整理できます。
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@目標設定の妥当性の無さ(納得感の欠如)
A目標達成に向け設定したKPIの妥当性の無さ
Bリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)不足
C現場での行動管理の未徹底
D日常のマネジメント(現場での行動管理)と組織が期待する行動管理や人事評価とのギャップ
E進捗管理における予算・実績との差異認識の精度の甘さ
F差異を埋める改善策の甘さ
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 これら@〜Fの要因を放置すると,「目標の達成」や「組織の成長・社員の成長」は困難になります。ここでは,筆頭に挙げられる「目標設定の妥当性」に注目して,改善策をご提案したいと思います。
 様々な業種業界の企業のご支援をする際に,社員インタビューを実施していますが,多くの職場で目標に対する納得性の低い状態が見受けられます。納得性の低い主な要因は,a. 目標の内容(どこへ),b. その目標にした理由(なぜ),c. 目標達成の計画(どのように)の3点につき,賛同が得られていないことが挙げられます。従って,これら3点を解消する社員への説明が必要です。ところが,実際には,当該目標の理由(b)や目標達成の計画の説明(c)が不十分で,社員の疑問に応えることができておらず,目標に対する納得が得られていません。

■妥当な目標を設定するための3つのポイント

 ではどうすればよいか? ポイントは以下の3点(T〜V)の実行です。

T.自社・自部門のミッション・ビジョンを持つ
 ただ単に数値目標を伝えるだけではなく(部門長であれば,単に会社から降りてきた数値目標を部下に伝えるだけではなく),「自社・自部門をどうしたいのか」「なぜそうしたいのか」「どのように実現しようと考えているのか」を語っていただきたいと思います。

U.磁力ある目標設定
 次の点を押さえる必要があります。
●目標の内容……意義性(ミッション・ビジョンと連鎖しているか)
●理由(なぜその目標なのか)……利他性(自社の業績の都合だけになっていないか)
●方法(どのように達成するか)……実現可能性(目標達成のために予算配分・必要要員数・実行施策等のリソースが揃えば実現できそうだと部下が思える内容か)

V.双方向のコミュニケーション
 コミュニケーションの重要点は“部下が何の気兼ねなく,場に意見を言える状態になっているか”という「心理的安全性」です。会議等の場で心理的安全性が確保されるには,上位職の気持ちがフラットな状態である必要があります。これがないと,「Noと言える雰囲気ではないからYes……」という状況が解消されず,目標に対する納得感も得られません。面従腹背になり,部下は受け身で目標も未達という最悪の状況すら招きかねません。
 部下の意見に耳を傾けることが必要です。そのうえで,目標についての合意を得ていくようなマネジメントが望まれます。

(月刊 人事マネジメント 2020年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
人材育成機関にて事業責任者として従事するとともに、新規事業立上プロジェクトに参加。大手人材開発会社にて研修講師として、携帯電話会社、コンビニ、政府系金融機関等の研修を担当する。主な研修実績は、マーケティング研修、管理職研修、リーダーシップ開発研修等を実施。組織・人事系のコンサルティング会社にて、大手自動車メーカーの組織生産性向上のコンサルティングに携わる。その他、経営理念の構築、中期経営計画の策定、マーケティング計画の策定、営業戦略の策定、人事制度構築、経営幹部育成塾運営をテーマに企業支援に従事。著書に『HR Standard 2020 −組織と人事をつくる人事マネジメントの起点』(ダイヤモンド社)。

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