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DXを推進する人材採用戦略

(株)POL エンタープライズチーム 山永航太

 今,各企業がデジタルトランスフォーメーション(以下,DX)を加速させています。これまで多くの企業がIT業務を外部ベンダーにアウトソースしてきたため,いざDXを推進することになっても社内に人材がいません。中途採用をしようとしてもデジタル人材は母数が少なく,転職意向のある人材はさらに人数が限られるため採用に困る企業が少なくありません。その結果,DXを推進する人材確保のため,新卒採用に舵を切る企業が増えています。

■先端IT人材をどう採用すべきか

 DXが実現するものは大きく「新価値創出」と「生産性の向上」に分けられ,特に難しいのが「新価値創出」に必要となる先端IT人材の採用です。DXの推進に必要な先端IT人材は専門性が高くジョブ型雇用と相性が良いとされます。そのため人材採用においてもジョブ型への移行がポイントとなります。では,従来のメンバーシップ型と比較し,どのような変化が生じるのでしょうか。
 大きくはナビサイトや採用イベントを通じて応募数を増やすプル型の採用から,潜在的な候補者にリクルーターなどが直接アプローチするプッシュ型の採用に変わります。プッシュ型の採用手法には,ダイレクトリクルーティングツールの利用,逆求人形式のイベント参加,社員による後輩の紹介,リクルーター制度の運用,内定者によるリファラル,長期インターンの実施などがあります。このうち特に利用が増えているのがダイレクトリクルーティングツール(スカウト型サービス)です。ダイレクトリクルーティングの一番の良さは,待っているだけでは応募が来なかった学生層にも企業からコンタクトができる点です。大手でも自動車業界や家電業界では機械電気系の学生は採用できても,従来の事業イメージゆえに情報系の学生の採用に苦戦しています。そのため企業側から学生にスカウトを送るという方法が近年急速に広がってきています。

■学生をスカウトする際のポイント

 ダイレクトリクルーティングツールで先端IT人材を採用する際に重要な点は大きく2つあります。1つは「ターゲットの解像度を上げること」,もう1つは「ターゲットに合わせて訴求する魅力をアップデートすること」です。
 まず「ターゲットの解像度を上げること」では,ダイレクトリクルーティングの場合はマス型と違い1人ひとりにしっかりアプローチできる分,対応に工数がかかるので,最初にターゲットをきちんと見極めることが成功の鍵となります。
 「ターゲットに合わせて訴求する魅力をアップデートすること」も,レッドオーシャンである先端IT人材の採用を左右します。先端IT人材に対して重視すべき訴求のポイントは大きく3つあります。
@人・組織の技術力:論文,出場学会,Kaggle,研究者や教授,共同研究先や提携先,勉強会の頻度や質
A研究開発環境:データ量や内容,利用ライブラリ,計算機器の性能や利用可能台数,研究所
B待遇:年収,配属方法,福利厚生
 それぞれ今の自社の魅力となるもの,今後拡充する必要があるものを棚卸しし,誰がいつどのような方法で伝えるべきかを設計し直す必要があります。「ターゲットの解像度を上げること」と「ターゲットに合わせて訴求する魅力をアップデートすること」の2つを実施するうえで学生へのインタビューも効果的です。
 今回お伝えしたことは他の採用手法でも重要ですので,DXを推進するための人材採用にお困りの方には,ぜひ意識してほしいポイントです。

(月刊 人事マネジメント 2021年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
新卒で楽天(株)に入社。グローバル人事部(現グループ人事部)新卒採用グループに配属。アシスタントマネージャーとして、東京・大阪の2チーム計10名のマネジメントを担当。採用ターゲット選定、インターンシップ企画運営、内定面談、入社式企画運営、まで幅広く採用業務を行う。海外インターンの企画運営にて部内アワードも受賞。現在はLabBaseで、主に大手企業様向けに採用コンサルタントとして従事。

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