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新入社員研修で最も大切なこと

(株)One Colors 代表取締役CEO 堂前晋平

 新入社員研修は一生に1回しかありません。長く続くキャリア形成において,初めて社会人としての考え方を学ぶ場ですから,その重要性は非常に高いものがあります。この時代だからこそ新入社員に伝えるべき内容を考えてみましょう。

■VUCAの時代に新入社員が持つべき力とは

 現代は「VUCA*の時代」と言われ,世の中の変化が激しく,将来がどうなるか予測が難しい時代になりました。これがビジネスにおいて意味するのは「過去の常識や成功パターンが通用しにくくなる」ということです。今までこうだったから,過去これでうまくいったから,という従来の手段を模倣する進め方では途端にうまくいかなくなります。
*VUCA:Volatility(激動),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑性),Ambiguity(不透明性)
 そこで重要になる力が「変化適応力」です。変化適応力を身につけるために必要なのは「手法・手段」ではなく,「目的」や変化の裏側にある「背景」への着目です。そうすることで,1つの出来事や経験から学んだ内容を,その出来事以外でも活かせるような「変化に適応する本質的な力」を養うことが可能になります。例えば,ありがちなマナー研修では席次を教え,それが正しく実行できることをゴールとします。しかし,これでは変化適応力は身につきません。席次の目的は「日頃の感謝の気持ちやおもてなしの心」を相手に伝えることであり,いわゆる席次は手段の1つだと教えることが大切です。そうすることで,ただ単純にマナーを守れば良いという思考を抜け出し,シチュエーションが変わっても通用するようなビジネスマナーを「自ら思考する」ように成長していきます。
 また,時代背景から考えた際には,エンゲージメントを高めるという観点もコロナ禍の新入社員研修においては欠かせないでしょう。

■エンゲージメントを高める秘訣とは

 エンゲージメントとは次のような心理状態を指します。
●仕事に対して主体的・自発的である
●組織に対して貢献意欲がある
 アメリカのギャラップ社が実施した調査によれば,エンゲージメントが高い組織は,低い組織と比較し,@収益性が10%高い,A生産性が21%高い,B顧客満足度が10%高い,という結果が出ており,他にも多くの調査で,エンゲージメントの重要性が証明されています。
 では,どのようにすればエンゲージメントを高められるのでしょうか? また,新入社員研修ではどのような内容を伝えるべきでしょうか? そのポイントをご紹介します。
 そもそも,エンゲージメントには,@ワークエンゲージメント,A組織エンゲージメントの2種類が存在します。ワークエンゲージメントは仕事に対しポジティブな状態を意味し,組織エンゲージメントは会社や職場への愛着といった意味を持ちます。
 「ワークエンゲージメント=仕事に対してポジティブな状態」を生み出すためには,仕事に対する意味づけ・意義づけが重要です。自分たちの仕事が社会にどのような価値を生み出しているのか,自社の存在意義はどのようなものなのか? こういった点を伝えることで,仕事に対するポジティブな状態を生み出しやすくなります。
 「組織エンゲージメント=会社や職場への愛着」の観点では,会社の理念(Mission・Vision・Value)や会社の歴史,あるいはそこで働く人たちのパーソナルな部分に触れることで会社や職場への愛着を高めていくことが可能になります。

(月刊 人事マネジメント 2021年3月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
株式会社ピアズ創業4年目に入社、自身もコンサルタントとして稼働しながらも全国のコンサルタントのトップとして社内育成等マネジメントを経験、2017年4月株式会社ピアズの役員就任。 2020年4月に株式会社ピアズの子会社としてオンライン教育をメイン事業とした株式会社 OneColors を設立、代表取締役社長に就任。

>> (株)One Colors
 https://one-colors.jp/