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人材獲得の新しいアプローチ

Sansan(株) 執行役員/Eight事業部 Enterprise Solutions部 部長 小川泰正

■従来型の採用では人材獲得が難しい時代に

 昨今,ビジネスのDX化が進み,AI・DX等の高度な専門性を保有する人材への需要の高まりや,「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への移行など,日本国内の労働市場が転換期を迎えています。こうした状況下での企業の採用は,従来型の採用モデルだけでは希少・優秀な人材の獲得が難しくなっており,新たな採用モデルを模索する段階となっています。
 名刺アプリ「Eight」のデータをみても,2019年は異業種間の転職が多かったのに対し,2020年は同業種間の転職が過半数を占め,即戦力が求められている傾向が分かります(*)。しかし即戦力を求める中途採用では,労働人口の減少に伴い,採用市場の母数もまた減少傾向にあります。各社の採用競争が激しくなりつつあることから,希少・優秀な人材を採用するには既存市場へのアプローチだけでは限界が来ています。そうした状況で注目されているのが「ダイレクトリクルーティング」です。転職検討中や転職活動中の候補者に直接コンタクトする採用方法が一般的ですが,「転職顕在層」へのアプローチでは上述の通り労働市場の縮小に伴い,希少・優秀な人材獲得の競争が激しくなっています。
* Eightに登録している名刺情報の統計データより。ここでいう「転職」は,名刺の企業名の変更を指す。

■希少・優秀人材獲得の新しい手法とは

 そこで,新たに模索されているのが現職で活躍する人材にダイレクトにアプローチをする方法(プロフェッショナルリクルーティング)です。現職で活躍する人材に対して,転職を意識する前から緩やかな関係性を構築しておき,その後,本人が転職を検討するタイミングがあった際に他社に先んじてアプローチするというものです。現職で活躍する優秀な人材に加え,転職市場で見つけにくい希少な人材の獲得にも効果的な手法といえます。
 例えば,当社が手がけるダイレクトリクルーティングサービス「Eight Career Design」では,290万人超のビジネスパーソンの母集団が構築されています。ユーザーが経歴をキャリアサマリーとしてまとめ,自身が持つスキルを“タグ付け”しているため,採用担当者は自社が求める人物を見つけやすく,緩やかな関係性の構築にも役立ちます。実際,いざ転職に向けて動き始めようとしている現職で活躍する人材にいち早くアプローチする方法の1つとして,既存の採用サービスと併用されるケースが見受けられます。ある製薬メーカーは,特定の疾患領域の担当MRを探していましたが,採用市場では候補者自体が非常に少ない状況でした。そこで,現職で活躍する人材との緩やかな関係性を構築しておいて,いざ本人が転職を考えた際に即時にアプローチし,採用を成功させています。またAIやDXに関わる人材に対して,転職市場に出てくる前にアプローチして,採用を実現している企業もあります。
 今後の採用では,「転職活動中」「転職検討中」「転職未検討」など候補者のフェーズに合わせた採用サービスの活用が重要です。「転職顕在層」を対象にした転職サイトの利用も1つの方法ですが,希少・優秀な人材の獲得には現職で活躍している人材に目を向け,母集団を広げていくことも効果的です。求める人材がなかなか見つからない場合は,プロフェッショナル人材を発掘し,アプローチしていく手法が,解決の糸口になるかもしれません。
 今後の採用市場ではますます競争の激化が想定されます。希少・優秀な人材を獲得するには,候補者のフェーズに合わせてアプローチ可能な採用サービスを組み合わせていくことがポイントになります。

(月刊 人事マネジメント 2021年10月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
2002年エン・ジャパン(株)に入社。リーマンショック後の事業再編に関わったのち、子会社の取締役として事業立ち上げに従事。2015年にSansan(株)に入社し、執行役員として、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」のカスタマーサクセス、マーケティング等を牽引。2020年よりEight事業部にて、「Eight Career Design」事業の推進に従事。2021年よりEnterprise solutions部を新設。

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