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「問い」の力で自律型組織を作る

(株)クエスチョンサークル 代表取締役 宮本 寿

 変化が激しい現代,テレワークの普及も伴い,これまで以上に社員1人ひとりが自ら考え判断し,物事を推進する「自律」が求められる時代になってきました。しかし,実際にマネジメントを行うリーダーには,以下のような場面もあるはずです。
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●メンバーに考えさせるつもりが,つい自分の答えに誘導してしまう
●1on1等の対話の場で,傾聴しているつもりが,情報収集や仮説検証のための質問ばかりしてしまう
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 このようなやりとりが続くと,メンバーはリーダーのなかに答えを探すようになってしまい,本人自ら考えて動く「自律」の機会を逃してしまいます。こういった状況を打破し,自律型組織を実現するための鍵となるのが,リーダーの「問いかけ」です。

■なぜ自律型組織作りに「問い」が有効なのか

 かつて,正解とされるものがあった拡大再生産の時代には,経験則こそリーダーの武器でした。しかし近年は,変化が激しく,数年先の見通しを立てることすら難しい時代になりました。正解のない時代に,求められるリーダーシップも変化しています。かつてのような,リーダーが決めた型へ導くマネジメントでなく,メンバーが自ら考え行動する力をつけるための支援が必要とされています。そのようなリーダーシップを発揮するうえで,「問い」は非常に有効です。
 例えば,メンバーに自律を促したい場合,「もっと自分で考えて行動してください」という指示命令と,「あなたなら,どのようにしたいですか?」という問いかけの,2種類のアプローチがあるとします。後者の場合(リーダーがメンバーに対して問いかけた場合),メンバーはそれに対して回答するわけですが,実際には,その回答に至るまでの間に「考える」というプロセスを踏みます。必ず,自分の頭で「考える」のです。非常にシンプルですが,このメカニズムの活用こそ,自律型組織作りのポイントだと考えています。
 前者の場合(指示命令した場合)は,メンバーは「考える」というプロセスを踏まないため,理解はできるけれども,行動は変わらないということがよくあります。一方,問いかけをして,メンバー自身が考え,その結果気づいたこと,やろうと思ったことは,自発的な行動に変わりやすいのです。

■リーダーが問う際に大事にしたいスタンス

 では,リーダーはどんなスタンスで問いかけるのがよいでしょうか。様々な観点があるなかで,私が特に大切だと思うポイントは「リーダーが答えを手放すこと」です。
 リーダーはどうしても,自身の知識や経験則で先に答えを描きがちです。もちろん,自分なりの答えを持つことは悪くありません。ただ,それが唯一解であるかのような前提でメンバーに問いかけると,それは成長支援のための問いではなく,単なる誘導尋問や詰問になります。この場合,メンバーは当然,リーダーのなかに答えを探して判断をあおぐ意識となり,次第に自分で答えを見出すことができなくなるのです。これは,メンバーの主体性や創造性が発揮される機会の損失につながります。
 それを回避するために,リーダーは「メンバーのなかに答えがある」というスタンスで問いかけることが重要です。問いかけることで自律を支援するリーダーシップを,私は「支援型リーダーシップ」と呼んでいます。リーダーが,答えを持って指示命令するのではなく,メンバーのなかにある答えを本人が発見できるように問いかける。そのための問い方を訓練し,支援型リーダーシップを身につけることこそ,自律型組織作りの一歩となるのです。

(月刊 人事マネジメント 2022年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1975年静岡県生まれ。明治大学商学部卒業。リンクアンドモチベーション、グロービスを経て、2007年株式会社メロスパートナーズ設立。ベンチャー・成長企業に対する組織開発プロジェクトのファシリテーション、および経営層・マネジメント層を対象としたアクションラーニングコーチとして活動。2019年株式会社クエスチョンサークル設立。現在は「クエスチョン思考」と称した思考法の体系化や普及を通じて、クライアント企業の組織開発やビジネスリーダーの支援型リーダーシップ開発を支援している。

>> (株)クエスチョンサークル
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