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出社とリモートの最適解とは?

ACALL(株) 代表取締役 長沼斉寿

 コロナ禍を機に急速に広まったリモートワーク。2022年に入り,オフィスへ出社回帰する企業とリモートを継続する企業に分かれ,両者を組み合わせたハイブリッドワークも一般化し始めました。
 働き手にとってリモートワークは自分に合った働き方を実現しやすく,企業にとっても優秀な人材の獲得や離職率低下などの人事面,オフィス維持費や交通費削減などのコスト面でメリットが大きいといった背景から,正式にリモートワーク制度を導入した事例も多くありました。一方で,コミュニケーションが取りにくい,業務プロセスが把握できないなどの理由で出社に回帰する動きもあり,出社勤務に戻した企業のなかには,経営層と働き手の間に大きな溝が生まれ,優秀な人材が離職したケースも散見されました。リモートワークとオフィスワークにはそれぞれに利点と課題があるからこそ判断が難しく,各社で最適な働き方を模索する状況は今後も続いていくと予想されます。

■「出社」の意味がコロナ禍で変わった

 出社が当たり前だった状況から,コロナ禍を機になかば強制的にリモートワークを経験し,オフィス以外の場所でも仕事ができることが分かりました。
 一般的にリモートワークはオフィスワークに比べて集中力が上がるとされ,それを体感した働き手にとっては「出社は非効率」と感じてしまうこともあるでしょう。一方でオフィスワークはコミュニケーションの活性に効果的ともいわれ,出社してコミュニケーションを図るための社内イベントを開催する企業も登場し始めました。さらに出社の効果を促すため,自社ビルにサウナルームや瞑想部屋,ジムなどを設ける企業もあります。働き手のなかには,通勤を運動と捉えたり,出社は作業をするためではなく,コミュニケーションを図る機会と捉えたりする意見も多く見受けられます。つまり,コロナ禍で新たな働き方を経験した今,オフィスには「仕事をする場所」以外の役割が求められているのです。

■うまくいくハイブリッドワークのポイント

 ハイブリッドワークがうまくいっている企業は「生産性が上がった」と口をそろえます。そんな企業に共通するポイントは,社員が自律的に働き方を選べる環境です。そうすることで,集中したい日はリモートワークに,コミュニケーションを図りたい日は出社するなど,業務や自分自身の状況に合わせてセルフマネジメントをするようになり,結果的に生産性だけではなく,会社への帰属意識やモチベーションも上がっています。ハイブリッドワーク導入の際には,オフィスづくりやツール活用などのハード面,そして制度づくりなどのソフト面の両方で環境を整え,どちらも同時に進めていくことが重要です。部署を超えてコミュニケーションを取りやすいオフィスレイアウトや,コミュニケーションアプリや座席予約システムなど各ツールの活用,会社のビジョンやカルチャーを浸透させるための制度づくりなど,目的に応じて様々な取り組みを同時に走らせている企業が多く見受けられます。また,企業文化やコミュニケーション,信頼関係,人事評価,個人の成長,働きがい,働く環境,福利厚生など,“ベストな働き方”の実現には様々な要素が関係するため,人間の判断ではなく,データの活用も重要な点になると考えられます。
 企業は業績を上げたい,個人は自由に働きたい,この両者は対立構造になりがちですが本来のベクトルは同じはずです。社員が自律的に働き方を選べる環境を整えることで,エンゲージメントやモチベーション,セルフマネジメント力が上がり,その結果として生産性も向上していくでしょう。

(月刊 人事マネジメント 2022年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
鹿児島県生まれ、兵庫県宝塚市出身。神戸大学経営学部卒業。2004年より日本IBMでITエンジニアおよび金融市場向けIBMグローバルソフトウェアの日本国内でのコンサルティングセールス職等を経て、2010年にACALL(株)を設立。企業向けソフトウェア開発事業、メンタルヘルスwebサービス事業等を経て、2016年7月に現事業を開始。「Life in Work and Work in Life for Happiness 」をビジョンとして、「くらし」と「はたらく」を自由にデザインできる世界を目指す。

>> ACALL(株)
  https://www.workstyleos.com/