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ポストコロナのチームマネジメント

アデコ(株) 取締役 土屋恵子

 2019年末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大によって,私たちの働き方は大きく変わりました。最大の変化は,在宅勤務を中心とするテレワークを導入する企業が格段に増えたことです。一方,会社によっては,オフィスに出社する従来の働き方が中心となっているケースも少なくありません。
 Adecco Group Japanはこの5月に,テレワーク中心で働くチームの管理職500名,出社中心で働くチームの管理職500名を対象にした『コロナ禍での部下のマネジメントに関する調査』を実施しました。その結果から,ワークスタイルの違いによってマネジメントにどのような差が生まれるかを明らかにすることができ,新たなチームマネジメントのあり方について考察しました。

■テレワークのメリットとデメリット

 まず,「生産性」と「部下との関係性」については,テレワークのほうが優れていることが明らかになりました。「コロナ禍で部下のパフォーマンスが向上した」と考えている管理職は,テレワーク中心のチームで30.0%,出社中心のチームでは17.6%でした。また,「コロナ禍で部下との関係が良好になった」と考えている管理職は,やはりテレワーク中心のチームのほうが高い傾向にありました。
 この結果から,テレワークによって,仕事に集中できる時間を確保でき,ワーク・ライフ・バランスの充実が,より効率的な働き方を実現できていることが見て取れますが,その一方で,「マネジメントはテレワークのほうが難しい」という声も多く聞かれます。例えば「部下をマネジメントする難易度」においては,テレワーク中心チームの管理職の約6割が「難易度が上がった」と答えています。これは,出社中心チームの管理職よりも10ポイント以上も上回る数字でした。
 もう1点,テレワーク中心チーム,出社中心チームのいずれの管理職も,コロナ禍における部下のマネジメントの最大の課題が「モチベーションの管理」であると考えていることも明らかになりました。周囲に感染者が増えるなかで,気持ちを切り替えながら目の前の仕事に集中するのはストレスにもなります。そのような状況で部下たちの働くモチベーションを絶やさずに,チームの生産性を向上させていくにはどうすればいいか。そのような悩みを多くのマネージャーは抱えていることが分かりました。

■マネージャーに求められるスキルと行動

 ではポストコロナの時代において,マネージャーに求められるのはどのような役割なのでしょうか。Adecco Groupが,日本を含む世界25ヵ国1万4,800人の働く人々を対象にして実施した調査から,ある一定の方向性が見えてきています。
 「パンデミック後のマネージャーの役割として重要であると考えられるスキルと行動」のトップ4は,以下のような結果でした。
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 1位 部下を信頼して仕事を任せること
 2位 部下のニーズに対応できる柔軟性
 3位 共感力と協力的姿勢
 4位 部下に安心感を与えること
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 これらのスキルは,従来マネージャーに求められている資質ではありますが,信頼や柔軟性がこれまで以上に強く求められていることが分かります。
 コロナ禍が過ぎ去っても,『ビフォーコロナ』の時代に戻ることはもはやないでしょう。企業は,社員を単に労働力として期待するのではなく,互いの多様性や個性を活かしながら未来を一緒に創っていく仲間として,相互に意見を交わし関わっていくことがより重要となっていくのではないでしょうか。

(月刊 人事マネジメント 2022年11月号 HR Short Message より)

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主にグローバルカンパニーで20年以上にわたり、ビジョンの実現に向けて個人と組織が個性と強みを生かして共に成長することを基盤に組織開発をリードする。人事部門の統括責任者として、チームと共に日本およびアジアのリーダーシップ開発、人財育成、制度策定・浸透などを展開する。2015年より現職。ケース・ウェスタン・リザーブ大学経営大学院組織開発修士課程修了。

>> アデコ(株)
  https://www.adeccogroup.jp/