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チーム型マネジメント成功のカギ

(株)スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 木 穣

■ボス型マネジメントの限界

 「上司ガチャ」って言葉があるらしいです。おもちゃのガチャにたとえて,どういう人が上司になるかは運命で,その運命によって当たり外れがあるということを表しています。上司の立場にいる方にとっては嫌な言葉ですね。しかし,1人の上司が部下一人ひとりとコミュニケーションをとり,モチベーションを上げる責任も持ち,育成もしなければならないというのは,そもそも無理があると思うのです。子供にしても,多くの場合親がいて,学校の先生や塾の先生がいて,兄弟も関わって大勢の人が成長に対して影響力を持っています。
 一方,会社では大人だという前提のもと,複数の人に対する責任を1人の管理職が持つ雰囲気になっています。こういった1人のリーダーが複数のメンバーの面倒をみるスタイルを私たちは「ボス型マネジメント」あるいは「鵜飼い型マネジメント」と呼んでいます。そして,多様な個性の尊重が求められる時代に1人に頼るこのスタイルは限界を迎えつつあると思っています。

■チーム型マネジメントで重要な場づくり

 私たちは組織風土改革プロセス支援を行っています。その途上で,個人個人が生き生き動いているチームに出会うことがあり,そういったチームを観察するといくつかの特徴が見られます。1つは話し合いを見ていても誰がリーダーなのかパッと見分かりにくいこと。もう1つはそのチーム内のどの2人組を抽出しても相談関係があることです。実際はチームの向かうべき先の旗をしっかり持っているリーダーはいるのですが,見た目では分かりにくいのです。それは指示命令があまり見られず,話し合いと個々の判断によってチームが動いている度合いが高いからです。
 ウェルビーイングが重視される今は,個人がその人らしさを発揮し働けることが重要になります。ただ個人が自由にバラバラに動くと全体のパフォーマンスが落ちます。また個人間での対立も起きやすくなります。これをどうにかするのがマネジメントなのですが,問題はそのやり方です。リーダーがメンバーと1対1対応で行うのでなく,チームのメンバーそれぞれが自分や他のメンバーの特性やモチベーションに関心を持ち合うチームを作るところに力点をおくべきです。先に紹介したチームは自然とそうなっています。なぜそうなっているのか。それはメンバーそれぞれの思いを共有しながら,目的を定めていく場を作ったからです。単に意見を言い合って答えをまとめるだけの話し合いの場ではなく,メンバー個人の価値観や感じていること,好きなことや苦手なことなども共有しながら対話をしていく場づくりです。お互いをよく理解し合い,違いを分かったうえで1つの方向を目指して対話や行動を行っていくというプロセスを通じて,お互いが弱みも開示しながら相談し合う関係が生まれてくるのです。相談とは,自分の弱みをさらけ出せる関係にないとできないので,この点は重要になってきます。
 こうした場づくりを実現できたリーダーは,メンバーが個性を生かし合いながら自律的に判断して動いていく,そんなチームを作っています。このマネジメントのやり方を私たちは「チーム型マネジメント」と呼んでいます。人間の交流には2種類あるとされます。役割交流と感情交流です。日本人は単に合理性だけでなく,情緒性もかなり大事にします。従って,役割交流だけでなく,感情交流も含めて対話の場づくりをすることでチームマネジメントが可能になります。それがこれからのマネジメントに求められることだと思っています。

(月刊 人事マネジメント 2024年1月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
福岡県生まれ。トータル8回の転職を経験。組織開発コンサルタントとして、人事制度策定および研修開発のコンサルティング会社を経て、人の気持ちを真正面から扱う「気楽にまじめな話をする場=オフサイトミーティング」に衝撃を受けてスコラ・コンサルトに入社。以来、オフサイトミーティングを1,000回以上実施。メンタル不調者がゼロになった事例やV字回復した事例など経験する。
 組織変革への重要なファクターである、"場"づくりのプロフェッショナルとして、対話力向上研修や若手リーダー養成プログラムなどを行っている。公開コースで対話力を磨く「マネジメント・ダイアログ・ジム」や対話コーディネーター研修も実施中。「ゆるさ」が持ち味。

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