
成果と成長につながる1on1を
(株)KAKEAI 代表取締役社長 皆川恵美
コロナ禍以降,「上司と部下の定期的な対話の場」として1on1を取り入れる企業は急増し,多くの組織で制度として定着しつつあります。一方で,実施していても事業成果や個の成長につながらないという実感や,現場での行き詰まり感も広がっています。「やっているのに,変わらない」。そんな声を,私たちは数多く耳にしてきました。KAKEAIは,10万組織・300万回以上の1on1データをもとに,対話とマネジメントの支援を行ってきました。その蓄積を踏まえて実施した1万人規模の実態調査から,形骸化の構造と,解消の方向性が見えてきました。
■1on1の導入は進んでいるが……
調査から明らかになったのは,1on1には大きく2つの姿があるということです。1つは「1on1で終わる1on1」。もう1つは「マネジメントの発揮シーンとしての1on1」です。同じように対話の場を持っていても,その場で完結してしまうのか,日々のマネジメントに溶け込み,メンバーを動かしていくのか,生まれるものは大きく違いました。
両者を分けるのは,実施頻度でも時間でも話題の豊富さでもありませんでした。最も成果・成長への影響が大きかったのは,面談が,次の具体的な行動や,行動につながる思考の変化に結びついているかどうか,という一点でした。私たちはこれを「行動接続」と呼んでいます。調査では,この行動接続の強さに応じて回答者を3つのグループに分け,「1on1が業務成果につながっている」という実感の有無をグループごとに比べました。すると,1on1で話したことを毎回のように行動に移せている人は,その61.3%が「業務成果につながっている」と実感したのに対し,ほとんど行動に移せていない人ではわずか7.0%。8.8倍の差が生まれていました。
さらに,部下がどのような心構えで1on1に臨んでいるかも結果に深く関わっていました。例えば,上司への期待です。上司に意見を求めるのでも相談を持ちかけるのでもなく,ただ時間が来たから席に着いているような状態の人たちが成果を実感できているのはわずか8.4%にすぎません。形式を整えるだけでは,対話は機能しないのです。
■1on1をうまく機能させる4つのポイント
では,「1on1で終わらない1on1」を作るために,何ができるのでしょうか。調査から導かれた構造的なレバーは4つあります。
第一に,上司への期待を事前に定めやすい工夫を。「アドバイスがほしい」「一緒に考えてほしい」「まず話を聞いてほしい」など,選択肢から部下が事前に選べる仕組みをガイドライン化するだけで,対話の出発点が変わります。
第二に,土台となる関係性を整える工夫を。信頼が育つには段階があります。少なくとも「関係性の困りごとがない」状態を意識的に作ることが,対話の質に直結します。
第三に,小さくとも“次の行動”につなげる工夫を。頻度や時間などの形式を変えても,行動接続がなければ結果は変わりません。個別の状態や事情に目を向け,対話の最後に必ず次の一歩を確認するという習慣をつけることが重要です。
第四に,部下の小さな変化を認め,主体的な動機を引き出す工夫を。「主体的になろう」と呼びかけるだけでは,受け身の姿勢は変わりません。部下のわずかな変化を見逃さず,本人に伝えること。それが,自分の力で進んでいるという自覚を生み,受け身の動機を内側から変えていきます。
1on1を「実施する施策」から,「成果と成長につなげるマネジメントの起点」へ。その捉え直しが,今まさに求められています。
(月刊 人事マネジメント 2026年7月号 HR Short Message より)
HRM Magazine.
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