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書評 2016.03

絶対やってはいけない会社の人事

 大小600社を超えるコンサルティング実績に基づいて,人事トラブルを回避するために今すぐ手を打つべきテーマを抽出。@採用,A就業管理,B職場のコミュニケーション,Cハラスメント,D非正規雇用者,E退職・解雇,F賃金制度,G人事制度,の8章・計47のポイントを解説している。残業管理,名ばかり管理職問題,均等法対応といった定石はもちろん,有期雇用5年更新問題,改正派遣法対応,社会保険加入条件拡大,産業医面接(ストレスチェック義務化)等,新しい課題も盛り込んでいる。また,「お前なんかクビだ」というセリフが有効だったのは50年前であり,今は解雇権の前提条件を押さえておかないと会社が不利になると述べ,かつては常識とされていた指導法が近年は大きなリスクに浮上している点にも注意を促している。さらに,年俸制,職能資格制度,福利厚生のあり方では“常識の嘘”を見抜いて,慣習からの脱却を示唆する他,休暇管理や固定残業代の運用ポイントなども整理されていて,知識確認という点でも大いに参考になる。

●著者:河西知一/小宮弘子  ●発行:総合法令出版/2015年11月2日
●体裁:四六版/254頁  ●定価:1,500円(税別)

社長,業績を上げたいなら女性社員を辞めさせないで!

 均等法施行直前に就職し,寿退社,出産,再就職,そして起業というほぼ30年にわたる著者のキャリアには「いつも追い風が吹いていた」と振り返る。本書はその追い風の正体を問いながら,今後の女性活躍推進のヒントを考察している。この20年,女性にとっては社会進出の敷居が下がり,諸制度も整い,今はチャンス到来だと前向きにとらえる一方,それでも足かせとなるのが“昭和型・オヤジ系の価値観”だと見て,「昭和度チェックシート」まで載せている。ただ,男性中心社会の諸課題もさることながら,女性自身がそれら価値観に縛られ自ら壁を作ってしまう点は残念だとも述べる。例えば,「子供のために」「子育てが一段落するまで」といったもっともらしい理由をつけて家事に専念した場合,仕事の能力だけでなく意欲や責任感まで衰えてしまうと強く警戒している。女性活躍推進法を作っても,昭和型・オヤジ系の考え方を急に変えることはできないとも指摘し,「だから何があっても辞めさせてはいけない」と経営者に強い覚悟を迫っている。

●著者:響城れい  ●発行:パレード/2015年11月2日
●体裁:四六版/158頁  ●定価:1,400円(税別)

中小企業を長く続ける社長の指南書

 著者は銀行出身の税理士という立場だが,本書で語られる経営指南のほとんどの部分は「人」関連のテーマで占められている。顧客企業で見聞きした中小企業の経営実態と,ご自身が運営する会計事務所の事例をベースに職場づくりのアドバイスを熱く語っている。実際に長続きしている企業では社員を大切にしているという共通点を根拠に,社長には人材育成への投資(時間・費用・労力)を求め,中小企業が目指すべきは100億円企業ではなく100年企業だとも諭す。ただし,おかしな社長のもとに素晴らしい人材が集まることはないという真実から,社長自身のあり方も戒める。理念・ビジョンを示し,様々な決断を下し,結果責任を負うのは専ら社長の役割だとして,その点ではワンマン経営を肯定。「優しいだけより厳しい上司のほうが部下は早く一人前になる」「部下の不安は聞き,不満は聞き流せ」とハードにして合理的な一面ものぞかせる。そのうえで「会社は大人の学校」であるべきだとの理想を掲げ,社員が楽しく成長していける場づくりを提案している。

●著者:大石豊司  ●発行:現代書林/2015年12月28日
●体裁:四六版/199頁  ●定価:1,400円(税別)

驚くほど業績が上がる適材適所マネジメント

 200社以上の企業に対して組織コンサルティングの実績を持つ著者は,個々の人材の能力・スキルの高低よりチーム組成の巧拙のほうが重要だとみている。突き詰めると“メンバーと上司との相性”の課題であり,それは「3つの個性」と「4つの役割」の組み合わせで解決できると語る。「個性」では,価値観・スタイルなどの特徴から,@人志向,A城志向,B大物志向,の3つに分類できるとし,各タイプの特徴と見抜き方のチェックリストを公開。また「役割」では,@参謀,A突撃隊長,B前線部隊,C指揮官,の4つの機能が求められると解説。あらゆる組織のパフォーマンスは,この「3つの個性」と「4つの役割」のマッチング次第だと仮説を立て,ホンダ,松下,京セラ,各社の創業時の組織図を例に検証を試みている。また,実際のコンサルティング事例からも,個性を分析し配置を変更することで状況を好転させたビフォー・アフターを複数業種にわたって整理してみせる。適材適所の前提となる人を見る目の鍛え方も人事としては注目点だろう。

●著者:柴田 肇  ●発行:幻冬舎メディアコンサルティング/2016年2月1日
●体裁:新書版/242頁  ●定価:800円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki