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書評 2017.07

限定正社員制度導入ガイドブック

 勤務地・勤労時間・職種等の要素を限定して無期雇用する「限定正社員」は,企業側にも多くのメリットがある。いわゆる無期転換の受け皿になるし,諸事情で継続勤務が難しくなり従来は辞めざるをえなかった人材が辞めなくて済むようにもなる。また,採用の機会も拡大でき,大局で見ると人手不足を解消する手段として期待できる。ただ,“良さそうだからさっそく取り入れよう”という前に,人事・労務の立場からすると詰めておくポイントがあり,本書はその点を細部に至るまで過不足なく整理してくれている。例えば,従来の正社員との間でコース分けをする根拠を抽出。さらに差をつける場合とあまり差をつけない場合のそれぞれのメリット(効果)・デメリット(懸念)を比較して示している。等級制度の設計,給与・賞与・退職金の制度設計も網羅。コース転換のルールの決め方にも言及。就業規則をどう変えるかや,現状から移行運用するノウハウに加え,巻末には制度を支援する助成金の情報も載せている。担当者目線の充実した良質な解説書だ。

●編者:みらいコンサルティンググループ  ●発行:同文舘出版/2017年4月20日
●体裁:四六版/199頁  ●定価:2,300円(税別)

シニア人材という希望

 銀行を退職してから61歳で起業した著者の経営する会社では,多彩なシニア人材たちが主要メンバーを占める。各自が専門性を発揮し,自分のペースで働いているその実態をベースに,今後ますます増えるシニア層がうまく企業社会で活躍していくためのヒントを探っている。改めて整理されると,確かに企業側にとってもシニア人材を雇用するメリットは大きい。知識・経験(成功・失敗の両方),コミュニケーション力,安定感,人脈,即戦力は備わっているし,人件費負担も軽い。一方,注意点もあり,過去の栄光をひけらかしたり,上下関係を作りたがったりする問題行動も指摘されている。ただ,個体差が大きいので,個々の人材を見極め,適切な働きかけができれば成長の余地はあるとして,未経験でも意欲次第で貢献できるケースを挙げている。シニア層に向けては,ボランティアよりも一定の責任の伴う仕事に関わるべきではないかと問いかけ,「あのときは良かった」と過去を見るのではなく「1年後にはこうありたい」と前を向くよう生き方を諭している。

●著者:中原千明  ●発行:幻冬舎メディアコンサルティング/2017年5月29日
●体裁:新書版/188頁  ●定価:800円(税別)

産業医が見る過労自殺企業の内側

 のべ50社以上で産業医を経験してきた著者が「過労自殺」を語る。テーマゆえ深刻な内容が予想されるのだが,実はお堅い白書系ではなく,一貫して産業医のポジションを意識して記述されているので,その視点が意外にも面白く興味深い。例えば「産業医が言っているから」と第三者の体裁を利用して,誰も言えなかった異動案件を上層部に切り出すような人事部もあったと暴露している。追い詰められやすい人の特徴では,他者に相談できない人や“あるべき論”の強い人を挙げつつ,人材流動の激しいベンチャーなどでは若手が軽症の「適応障害」を起こしがちなのに対し,大手企業では中高年管理職が重篤な「うつ」を罹患しがちだと,対比させて傾向を解説している。組織構造の面では,家族主義が崩壊しているのに封建的な価値観が残る会社が危ないと警告。組織への過度の従属は自殺率を高めると述べる一方,抑圧が減り何でもできる状況だと人々は不安になってやはり自殺者が増えるとも指摘する。時代をよく観た現場目線の考察には多々納得させられる。

●著者:大室正志  ●発行:集英社/2017年6月21日
●体裁:新書版/207頁  ●定価:720円(税別)

労基署がやってきた!

 元・労働基準監督官が労基署勤務時代の体験談とともに,これからの働き方のヒントを示唆した1冊。体験談では,ピンハネ手配師,賃金未払いラブホテル,ブラック社労士などに対峙し解決を図った話が時代・地域の背景を伴って面白く読める。また,特養老人ホームで悪質なサービス残業が発覚した“事件”では,経緯を詳しく追っていて,行間には気迫すらにじむ。実際,逮捕前日には手錠を掛ける練習をして,当日は被疑者を拘置所へ連行する仕事もしたと述懐している。また,関係者の証言の食い違いを手がかりに“労災隠し”を見破った事例も紹介。監督官のスゴ味を言外に伝えている。翻って今の時代では,長時間労働の罰則規定が実現することで,例えば「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」の権限・役割が増すのではないかとも見通す。また,違法があった場合,法人とともに労働時間を管理する人(上司・管理者)も送検される可能性を指摘し,一般読者に注意を促している。「働き方改革」の背後に監督官らの日々の奮闘があることは改めて実感できる。

●著者:森井博子  ●発行:宝島社/2017年6月23日
●体裁:新書版/192頁  ●定価:800円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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