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書評 2017.08

投資レジェンドが教えるヤバい会社

 ファンドマネジャーとして30年にわたり企業調査を担当し,6,500人以上の経営者と面会してきた著者が「ヤバい会社」の見極め方を本書に明かしている。「ヤバい」には“投資先としては適切ではない”というネガティブな意味に加え,“傑出してスゴい”という肯定的なニュアンスも含まれている。今や伝説となった「スリッパの法則」をはじめ,68の法則を解説。例えば,美人すぎる受付嬢が並ぶ会社は採用基準に偏りがあるとか,女子社員を「ウチのコ」呼ばわりする会社は社員を仕事のプロとして扱っていない,といった見方をする。ポジティブなものでは「社内結婚が多い会社は成長企業」という法則も興味深い。社内事情をよく知る女子社員が将来有望と見込んで伴侶を選んでいること,また,若い世代が多いという事実からも企業の成長余地の大きさが読み取れるという。あるいは,ワーク・ライフ・バランス支援を打ち出す会社は,生産性向上の仕組みが前提になっているので評価できるとも語る。投資目線が人事課題に重なる点には改めて驚きを覚える。

●著者:藤野英人  ●発行:日本経済新聞出版社/2017年6月1日
●体裁:文庫版/281頁  ●定価:800円(税別)

カイシャの3バカ

 組織の困った人たちを類型分析し,特にやっかいな「会議好き」「規則好き」「数字好き」の3タイプを「3バカ」と括り,心理学的知見を用いて考察を綴っている。会議好きでは,大した問題でもないのに会議を開き,雑談に流れるといった無駄に加え,上司の意見を通すだけなのに会議の場で決めたことにし,何か問題があった場合の責任逃れに利用される罠を指摘している。規則好きでは,「規則だから」という制約条件は実は自分で判断しなくて済むという上司の失敗回避動機が色濃く,その結果,職場全体が挑戦しなくなる弊害を問題視している。数字好きでは,背景要因を深く見ずに「とにかく数字を挙げろ」という指導・叱咤になりがちで,仕事が表面的で薄っぺらになり,職場全体が目先の仕事しかしない組織の劣化を招くと危惧。いずれも「3バカ」には“自信のない自分好き(=劣等コンプレックス)”と“見下され不安”という共通する特徴があるとして,周囲からは,その不安感を和らげてあげる対処法が有効だと具体策を挙げて解説している。

●著者:榎本博明  ●発行:朝日新聞出版/2017年6月30日
●体裁:新書版/229頁  ●定価:760円(税別)

人が辞めない会社がやっている「すごい」人事評価

 あしたのチーム社が導入指導を手がけている人事評価制度の仕組みを紹介した1冊。といっても,実際の運用先は業界も規模も異なり各社各様のスタイルになるためか,号俸表や評価シートといった統一的なツールは見せていない。その代わり,「人事制度で生まれ変わった会社」10社のストーリーを追うことで人事制度の“すごさ”に迫っている。制度の構成要素はMBO(目標管理)とコンピテンシー(行動評価)の2軸。社員自ら設定した目標をクリアしたら給料も上がるという絶対評価が特長の1つだ。つまり,目標がクリアされたら会社の業績が上がるという事前の業務設計こそが重要であり,マネジメントが最も真剣に向き合うポイントだとされる。必然的に部下と上司が面談する機会ができ,コミュニケーションのベースが形成される。年功要素や相対評価のバランス調整などを排除し,がんばった分だけ報われるという「フェア・バリュー(本当の価値)」を見極める人事制度は,結果的に採用力,定着力,育成力も高めると,熱く語られている。

●著者:高橋恭介  ●発行:アスコム/2017年7月7日
●体裁:四六版/208頁  ●定価:1,500円(税別)

御社の働き方改革,ここが間違ってます!

 国政レベルで議論が進み,すでに各社での取り組みも始まっている「働き方改革」につき,その本質と行方を中間総括を兼ねてレクチャーした内容。「残業時間の削減」は象徴的な課題だと認めつつも,それは改革の目的ではなく1 つのプロセスに過ぎないと警鐘を鳴らしている。つまり,残業を減らし,余裕時間で新しい時代への対応力を磨き,あるいはギスギスした空気をワクワクした関係に変化させることで,ようやくイノベーションに一歩近づけるのではないかと先の姿を見通し,そのうえで「まずは行動を変えてもらったほうが早い」とアクションを提案している。例として2007年から19時前退社を推進している大和証券のケースを挙げ,半強制的かつ時間をかけた活動から生み出された成果を報告している。他にもアクセンチュア,サイボウズ,リクルート,カルビーなどの先端事例をレポートして,理解の助けとしている。「働き方改革」を一過性のブームで終わらせることなく,日本企業のDNAを変えていく契機にするための核心を捉えた論考だ。

●著者:白河桃子  ●発行:PHP研究所/2017年7月28日
●体裁:新書版/271頁  ●定価:880円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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