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書評 2018.01

就業規則のつくり方・見直し方

 雇用分野では大きな法改正が相次ぎ,今は就業規則のメインテナンスも頻繁に求められる時代。労基法・労契法・安衛法等,対応必須の法令関係のほか,働き方改革,人手不足,シルバー人材(高年齢法),スマホトラブル(SNS拡散,情報管理)といった諸課題にも留意した諸規程の策定・整備が望まれる。とりわけ就業規則を古い内容のまま放置していたり,安易にヒナ型のコピーを流用していたりすると,思わぬ法的リスクを負う危険性もある。そこで本書は,読者企業各社に共通する今の課題を視野に,自社に適した就業規則を作成・見直しできるよう詳しい解説を綴っている。左ページに条文サンプル,右ページに該当項目のガイダンスというレイアウトで,条文の意味,要点,法令関係,諸条件等を理解しながら検討を進めていける斬新な資料に仕上げている。さらに,巻末には改めて「総則」から始まるモデル条文に加え,関連する各種「協定書」(記入例サンプル)も掲載。労務関連用語の索引も整理されているので,辞典のように便利に活用できる1冊だ。

●著者:大槻智之  ●発行:日本実業出版社/2017年11月1日
●体裁:四六版/335頁  ●定価:2,500円(税別)

定年バカ

 著者はすでに定年後10年を暮らす人生のベテラン。「定年に備えろ,定年後こそ輝こう」と訴えかける様々な啓発本を逆手にとって「うんざりだ」「好きにすればいいじゃないか」と反論を綴っている。啓発系の書籍やセミナーは“何もしない人生”を否定的に捉え,「充実した暮らし」「豊かな人間関係」を訴求してくるが,著者自身は,その日その日を,テレビを見たり本を読んだりして,そういう生活も別に悪くない,と実感を語る。そのうえで,「お金に焦る」「生きがい」「健康」「社交」「定年不安」「未練」「終活」の7項目につき,それぞれ過度に反応し奔走する姿勢を疑問視。さぁ定年だ,生きがいだ,資金計画だ,と騒ぐのは嘘くさいと述べ,知識と想像力だけで定年後の生活をレクチャーする講師陣には「達人ヅラするな」と斬りかかる。確かに,何十年も複雑怪奇な組織社会を泳ぎ抜いてきた百戦錬磨の退職者が,若手講師に生き方を教わるまでもないわけで,自ら考え覚悟を決めた結果の下流でも上流でもない,幸福でも不幸でもない現実論は無性に腹落ちする。

●著者:勢古浩爾  ●発行:SBクリエイティブ/2017年11月15日
●体裁:新書版/216頁  ●定価:800円(税別)

みんなでつなぐリーダーシップ

 書名も本文の語り口も非常にやさしい表現ながら,内容密度は相当に濃く,かつ実験的な訴求を盛り込んでいる。まず,「リーダーシップとはリーダーとフォロワーの関係性そのもの」という理論を引き合いに「それいいね」と賛同する仲間の存在に着目。フラットな人間関係から,テーマ次第で誰か(誰も)が言い出しっぺになり,賛同者が現れて初めてリーダーシップは機能すると解き,自分から一歩踏み出す力を全員が身に付ける姿を展望する。つまり,リーダーシップとは,力で引っ張るスキルではなく,内側の「思い」を起点に,無理せず共感者・支援者とのつながりを生み出すスタンスにポイントがあると語る。ただ,その柔らかさとは裏腹に究極的には管理者の存在を疑い,今ある組織構造をひっくり返す取り組みにも行き着く。事業・企業の課題から必要な人材を求めるのではなく,人の思いを起点に事業を創り出していく,従来とは真逆の発想を掲げつつ,賛否は当然あるという前提で,修正し続けることで折り合いをつける自社での試みも報告している。

●著者:高橋克徳  ●発行:実業之日本社/2017年11月23日
●体裁:四六版/256頁  ●定価:1,500円(税別)

バブル入社組の憂鬱

 ご自身も同世代だと明かす著者は,バブル世代がラッキーだったのは入社時とその後の数年だけではなかったかと振り返り,役職定年を前後してさいなまれる今の居心地の悪さを考察している。人数が多く給料の割に働かない中高年問題として捉えるあたりは,20年前の団塊批判に重なるのだが,彼我の差については世代論の切り口から改めて踏み込んで詳述している。ただ,本書の世代論で興味深いのは「氷河期世代」との対比だろう。人間関係を重視し何事もどうにかなると楽観的に受け流すバブル世代にとって,氷河期世代は機械的で余裕も面白みもない存在に映ると分析し,さらに「ゆとり世代」を加えた3者の言い分を描写している。本題に立ち返れば,憂鬱の正体は「入社時と今の環境とのギャップ」「氷河期世代との相性」「年下上司に対する苦手意識」「定年までの長すぎる時間」にあると見て,これから先のキャリアを模索。お得意の“根拠のない自信”を活かし,役職定年をリセット・再スタートの好機にしてはどうかとエールを送っている。

●著者:相原孝夫  ●発行:日本経済新聞出版社/2017年12月8日
●体裁:新書版/232頁  ●定価:850円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki