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書評 2018.04

グローバルポジションを獲りにいく

 本書は,VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)時代に世界で通用するリーダーシップ開発の必要性を訴えている。組織の和を乱さぬよう秩序を維持していれば年次管理で自動的に昇格者が決まってくるような人事をやっていては世界に負けるとの危惧が背景にあるようだ。必要なのは管理ではなくイノベーションであり,CEOの優先課題はリーダーシップ開発であると,主旨は明快。問題の所在が曖昧になる「連帯責任」ではなく, 1人ひとりに「アカウンタビリティ(結果責任)」を負ってもらい,失敗から学習し,新たな挑戦目標を導き出していく“強さ”を求める訴求も一貫していて,その矛先は当然ながら人事部門のあり方に行き着く。すなわち人事部門は,リーダーシップ分析を行い,事業戦略の成功可能性を予測し,得られた洞察を経営陣に提言すべきではないかと,ビジネスへの貢献を問いかける。より具体的には,タレントの見える化,人基準から職務基準への転換,横並び主義からの脱却,昇進昇格基準の見直しといった課題を挙げ,方策を詳述している。

●著者:(株)マネジメント サービス センター  ●発行:東洋経済新報社/2017年12月21日
●体裁:四六版/255頁  ●定価:1,600円(税別)

会社というモンスターが,僕たちを不幸にしているのかもしれない。

 著者はサイボウズ社の創業社長の立場ながら「カイシャ」は実体のないモンスターだと捉えて,そこから抜け出さないと楽しく働ける日は来ない,と論じている。従来のカイシャは長く社員を我慢させる仕組みを構築してきたが,もはや「40年間我慢レース」を強いるマネジメントでは限界だと指摘。理念を失ってまで組織の永続を図る合理性もないと割り切る。また,「規模」も「売上」もすごいことの証明にはならないと述べ,働く1人ひとりがやりたいことを追求できているか,創造性あふれる組織かどうかに価値を見出そうと考えを深めている。読者には,組織のビジョンと自分の夢は重なっているかを問い,それが難しければ転職(そこまでいかなくても異動)も選択肢ではないかと示唆する。「やりたい」「やれる」「やるべき」の交点を自らの意思で選択する「モチベーション創造メソッド」,あるいは,多様性の推進から化学反応を引き出そうとする「フラスコ理論」など同社での取り組みも紹介しながら,楽しく働くアイデアを整理してくれている。

●著者:青野慶久  ●発行:PHP研究所/2018年3月13日
●体裁:四六版/223頁  ●定価:1,500円(税別)

「女性活躍」に翻弄される人びと

 ジャーナリストかつ大学教員の著者は,複数の対象者と10年以上の長期にわたるコンタクトをとり続け,各個人の経年変化を追っていく独特な取材・研究活動を展開している。本書では働く女性(その後の離職者,周囲の男性含む)を中心に肉声を拾い,活躍推進の周辺事情を分析的に考察している。終始「働き方」に関わるテーマながら,人事部門が把握するような顕在化した情報ではなく,仕事とプライベートの境界上のモヤモヤを聞き出しているので,内容は相当に生々しい。結婚・非婚,出産・子育てほか様々な人生の選択時にどんな意識を抱いていたか,就労継続や管理職就任をどう捉えていたか,プライド,優越感,劣等感,挫折,後悔,諦念,希望といった交錯する複雑な感情を受け止めたうえで真相に近づいていく筆運びが興味深い。様々な考え方の人がいて,さらに当人たちの勤労観もライフイベントに前後して変化している様子から,活躍推進のあり方を巡っては“べき論”を押しつけずに“十人十色”を容認していく余地の重要性に注目している。

●著者:奥田祥子  ●発行:光文社/2018年3月20日
●体裁:新書版/277頁  ●定価:820円(税別)

上司の「いじり」が許せない

 本人もあまり気にせず,むしろ喜んで自虐キャラを演じているようにも見える「いじり」の実相を取材ベースで掘り下げた1冊。“被害者”の肉声(書面44人・ヒアリング13人)からは,明らかにハラスメントの域に達した陰惨な例もあれば,小さないじりが蓄積して中長期的に自己肯定感をすり減らしてしまっているようなケースもあり,かなり幅のある実態が報告されている。男女ともネタにされやすいのは容姿。業種では金融・営業に多く見られるという。新人がターゲットにされがちな背景には,いじる側の“仲間に入れてあげる心理”が作用しているとも分析されている。また,総合職女性も対象になりやすく,男性同様の働き方を求められる一方で,女子力の欠如をいじられがちだと描写されている。ただ,本書には被害をなくすためにどうするかという決定的な「解」は明示されていない。少なくとも「そのいじり,本当に大丈夫ですか?」と静かに問い,感覚麻痺した上司・組織に気づきを促すことが第一歩になるのかもしれない。

●著者:中野円佳  ●発行:講談社/2018年3月20日
●体裁:新書版/179頁  ●定価:800円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





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