*

HRM Magazine

人事担当者のためのウェブマガジン | Human Resource Management Magazine
HOME

書評 2019.06

トップ企業の人材育成力

 6名による6章の人材論に2名のコラムを加えたHR系の論考集だ。編者自身「どこから読んでもいい」と語る通り独立性の高い構成だが,いずれも少しだけ先の時代を見据えた科学的な人事の取り組みを示唆している点は共通する。それは,文系・アナログ・レガシーに縛られた旧来型の人事からの離脱を意味し,データとテクノロジーを駆使して,ロジカルに手を打つ姿の模索とも言い換えられるだろう。ピープルアナリティクス(AI×ヒト)を活用し,個性と組織と仕事のマッチングを図っていくところまで進んだ事例を紹介するのに併行して,本書は人事部門のあり方にも1本の道筋を示している。ファンクション型(業務対応)から脱し,一気通貫型(戦略人事)を経て,バックキャスト型(あるべき姿からの逆算)への機能変質をモデル化して訴求。人事部門は,採用担当あるいはシステム管理といった作業セクションではなく,全社の事業展開に即して人的資源を戦略的にハンドリングし,経営の中枢を担う役割を狙うべきだとする野心的提案をのぞかせている。

●編者:北野唯我  ●発行:さくら舎/2019年4月7日
●体裁:四六版/275頁  ●定価:1,800円(税別)

全員経営者マインドセット

 メンバー全員が当事者意識をもって組織の理想に向かって走り出す経営手法を公開した1冊。「MS(マインドセット)マトリクスシート」という1枚のツールをベースに,リーダーを見出し,メンバーを育て,人材を獲得し,個人と組織の成長を促していくノウハウを深く丁寧に解説してる。同シートは,タテ軸にマインドセットの度合いを下から上へ(0%〜 100%)示し,ヨコ軸にスキルの高さを左から右へ(C・B・A・S・SS)区切り,人材を個人名でマッピングするというもの。組織の状態を可視化し,誰に何を働きかけていけばいいのかを一目で把握できる仕掛けにしている。タテ軸・マインドセットの要素は,@当事者意識,A覚悟,Bオーナーシップ,C全体最適,Dミッションフィット,Eバリュー体現の6つ。ヨコ軸・スキルの要素は,@戦略思考力,Aコンセプチュアルスキル,B組織マネジメントスキル,Cテクニカルスキル,の4つ。つまり目標は「マインドセット100,スキルSS」の人材を増やすことになる。ロジカルかつ熱意あふれる組織運営論だ。

●著者:吉田行宏  ●発行:クロスメディア・パブリッシング/2019年4月21日
●体裁:四六版/288頁  ●定価:1,580円(税別)

「いつでも転職できる」を武器にする

 コンサルタントの立場から企業人事および人材市場の実態をよく知る著者は,普通の勤労者のためのキャリア論を本書に語っている。今の会社に居続けても成長できそうもないなら,賞味期限が切れる前に,いっそ横スライドしてはどうかとキャリアの選択肢に転職を加えるよう提案している。ただし,同じ職種の仕事でも,転職先がそもそも儲かる業界なのか,その会社は業界で1位か,成長期か衰退期か等によって待遇に歴然とした差がつく事情も明かす(衰退期の会社であっても本人の得意分野が事業再生なら活躍のチャンスは大きいとも指摘している)。スキルの棚卸とはいっても普通に会社勤めをしている限り強みや実績に大差がないのは当然だとして“持ち味”による希少性に着目。それを「人材キャラ」と言い当てて,資質に基づく“向いていること”をベースに人材市場と向き合うスタンスをアドバイスしている。他者の視点を借りた持ち味の見つけ方,人事デューデリジェンスの切り口による会社の見定め方のレクチャーも興味深い。

●著者:松本利明  ●発行:KADOKAWA/2019年4月27日
●体裁:四六版/272頁  ●定価:1,400円(税別)

人事評価者研修の効果的な進め方と業種別演習ケース集

 管理者の評価レベルを揃え,評価基準の理解・共有化を図る「評価者研修」のやり方をガイドしてくれる1冊。感覚的な評価ではなく,対象者の職位と期待される役割の関係を冷静に判断するといった基礎知識に加えて,演習素材(評価対象者モデル・行動エピソード)を様々な業種(製造業・運輸業・小売業・金融業・サービス業・外食産業,等)12のケースで載せた資料性は抜群だ。職歴・等級・所属部署・担当職務等で条件設定された人物の日頃の記録を読み込んで,評価項目欄に点数を書き込んでいくワークを前提に編集されている。研修当日は,管理者個人による模擬評価,続けてグループ討議,そしてグループ全体の評価をとりまとめて模範解答と比較参照するという運用スタイルになる。参加者は一連のプロセスから気づきを学習し,管理者個人および全社の評価スキルを向上させていくという狙いだ。研修の実施までは難しくても,巻末に掲載された「評価で陥りやすいエラー」や「評価者の心得」は,自社の評価者マニュアルの参考にできるだろう。

●著者:河合克彦・石橋 薫・大山 亨  ●発行:日本法令/2019年5月1日
●体裁:四六版/314頁  ●定価:2,700円(税別)

HRM Magazine.

【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki





【PR】月刊 人事マネジメント
……3ヵ月無料キャンペーン実施中!
http://www.busi-pub.com