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書評 2020.03

人材マネジメント革命

 果敢に変革に挑む「攻めの人事」を実践中のエネルギッシュな“カリスマ人事”たち12人へのヒアリングを編集したインタビュー集。3人の識者によるHR戦略論に続けて,先進企業12社の人事部長・CHOたちが自社の取り組みを語るという贅沢なコンテンツ構成だ。「16時半退社」「新卒1000万」など話題の制度の根本的なところで,職務型へのシフト,コンピテンシーの策定,タレントマネジメントの推進,HRビジネスパートナー制の運用,ダイバーシティの拡大を通じたイノベーションの模索といった一貫した人事政策を着々と進めている各社の状況が把握できる。一般論では当たり前に聞かれる「1つの会社で最後まで勤め上げる時代は終わった」との言説も,大手企業の人事本部長が自ら発言するに至って,その本気度は改めて衝撃的というほかない。バックオフィスの守りを固める“奥の院”ではなく,グローバルで戦う「攻めの人事」を目指すうえで,現在地と中長期の見通しを確認するための羅針盤として,共有を図っておきたい1冊だ。

●著者:大塚 葉  ●発行:日経BP/2019年12月23日
●体裁:四六版/224頁  ●定価:1,800円(税別)

メンタル不調者のための脱うつ書くだけ30日ワーク

 うつ休職の後半,「復職」を意識する段階で始める心身ストレッチのための自習型ワークシート集だ。1ヵ月の期間をかけて週に6〜 9課題,計30のワークを達成していくカリキュラムで構成されている。フィジカル面では毎日のウォーキングで基礎体力の維持と生活リズムの定着を図る。また,思考力・集中力の回復課題では,新聞記事の要約(伝えることを意識して,書いて,まとめる作業)に取り組む。メンタル面では「調子のよい・悪い」を把握するコンディションシートの記録を習慣化するとともに,ストレス要因(ストレッサー)をコントロールするスキルの習得にも挑む。とりわけ,うつ発症のきっかけとなった出来事に向き合い検証するプロセスは避けられないステップと位置づけ,自分の考え方のクセを客観視し,事実・根拠・反証を経てバランスよく捉え直す認知行動療法のメソッドを解説している。ゴールは復職ではなく,その後に能力を発揮し,活躍を続ける 姿だという前提で,相応の負荷も伴う高密度なプログラムを提案している。

●著者:長谷川亮 ●発行:日本能率協会マネジメントセンター/2019年12月30日
●体裁:四六版/200頁  ●定価:1,800円(税別)

仕事がつまらない君へ

 「仕事がつまらない」と考えるときが飛躍のチャンスだと,経営コンサルタントの著者は,若手ビジネスパーソンに向けて職業人生のヒントを語っている。「つまらない」まま我慢したのではそこで成長は止まり,また,自分探しや逃げの転職を重ねても“本当の自分”など見つからないカラクリを説き,「仕事を通じて新しい自分を作っていく」感覚と行動を求めている。ときにご自身の半生を振り返りながら,不器用・凡人だからこそ得られる感動・快感もあるとして,一定期間だけモーレツに働いてはどうかとも問う。すなわち,会社に縛られず裁量を持って面白く働けるのは何の分野でも「プロ」の人たちであり,「アマチュア」のポジションから脱するためには乗り越えるべき壁があるのだと犠牲を払う覚悟を迫る。偶然や運による不公平は受け入れ,努力は続けよと,5章・計44話にわたって厳しくもあたたかいアドバイスを綴っている。「仕事がつまらない」などと愚痴っている場合ではなかったと素直に気づきを得られる人には“刺さる”はずだ。

●著者:小林英二  ●発行:シーアンドアール研究所/2020年2月1日
●体裁:四六版/216頁  ●定価:1,680円(税別)

体育会系上司

 アメフト部,ボクシング連盟,体操協会等にみられた諸事件には,政治・行政・学校・企業など他の組織にも共通する病理があるとの仮説を立て,著者は,体育会系の人材と組織を心理学の視点から考察していく。まず,人材の特徴では,“挨拶ができ,仲間を大切にし,我慢強く,協調性を発揮し,集団行動に適合する”という,企業の採用基準に親和性の高いメリットを挙げる。一方で,“考えずに行動し,融通が利かず,認知的複雑性が低い(敵・味方をつけたがる単細胞)”といった弱点も整理。自信を持ち活動的で外向性が高いのは,内面を振り返る時間がなく,悩んだり劣等感を抱いたりする経験がなかったゆえではないかと分析している。組織が病んでしまう理由では,上意下達による思考停止,下位者の忖度が招く上位者の権力志向の拡大といった構造に注目し,一体感の強さが異質の排除と裏表の関係となって,柔軟な軌道修正を難しくしていると指摘する。最終章では,体育会系組織になじめない読者に向けてスマートな対処法を伝授してくれている。

●著者:榎本博明  ●発行:ワニブックス/2020年2月1日
●体裁:新書版/208頁  ●定価:830円(税別)

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki