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書評 2024.12

世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった 一流が大切にしている仕事の基本

 複数の大手外資系企業でキャリアを重ね,独立後は人事・人材開発分野のコンサルティングで活躍する著者が“ハイ・パフォーマーの仕事術”を綴る。3,000社以上のビジネスに関与し,1万人以上の人材を分析してきた経験から,圧倒的な成果を出し続けるハイ・パフォーマーには共通する思考と行動のパターンがあると指摘。仕事の質や効率の向上・問題解決・コミュニケーション・リーダー術・マインドセット等のポイントを50の要素に切り分けて詳述している。メモを取る効能,資料をA4サイズ1枚にまとめる意味とコツ,抽象的な上位方針を5W1Hに落とし込んでメンバーに伝える要領といった動き方のほか,自分自身を励まし堂々と振る舞う,偶発性を大事にする,年収相当額の貯金を確保し「お守り」にするといったキャリア形成の要点にも触れている。一流の人の動きは必ずしも恵まれた育成環境や天性によるものではないと語られている通り,ここに紹介されているTIPSは「今日からこれはやれそう」と思えるものが大半だ。一つひとつ試してみたい。

●著者:佐藤美和  ●発行:かんき出版
●発行日:2024年10月7日  ●体裁:四六版/240頁

なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?

 自分はこのままでいいのだろうか……と悩める勤労者に向けてキャリア開発の知見とアドバイスを綴った1冊。ベースにあるのは「プロティアン・キャリア理論」(勤労者自身がキャリアを見つけ歩みを進める方法論)だと著者は説明する。何になりたいのか? と職業を並べてみても選択肢の多さに圧倒され判断がつかず,結局「不満はないけれど満足はしていない」現状維持に流れてしまうジレンマを指摘し,その状態から抜け出すアクションを順序立てて解説している。キーとなるのは「なぜ」「誰と」「いつまで」という働くことへの3つの問いだ。自分のストーリーを「言語化」し,謙虚すぎずに他者からの評価を素直に受け入れ,自分の武器を「価値化」し,考えすぎずに試行錯誤してみる「行動」を促す。過去は変えられないが,今から変化していくことは可能だと述べ,キャリアオーナーシップのグリップを握るよう訴える。特に行動を妨げる5つのメンタルブロックをクリアしていくアクションのガイドは読者にとって心強い支援になりそう。

●著者:有山 徹  ●アスコム
●発行日:2024年10月30日  ●体裁:四六版/272頁

発達障害グレーゾーンの部下たち

 「空気が読めず他者を傷つける」「曖昧な指示に対応できない」「ミスや忘れ物が多く,何度注意されても改善しない」といった発達障害の傾向を持ちながらも医療の診断にまでは至らないグレーゾーンの人たちの課題を,カウンセラーの著者が一般向けに説き起こす。学生時代は成績優秀で,“浮き気味のキャラ”も個性として容認されてきたのに,社会に出て組織的な振る舞いが求められるようになってから問題化するケースが多いと典型例を挙げる。一方,発想力・独創性,特定分野での集中力,行動力,突き抜ける力といった優れた特徴も認め,そうした本人の個性や能力を引き出せる環境であるなら,あえて「発達障害」という疾病にカテゴライズする必要はないだろうとも述べている。豊富なカウンセリング事例を匿名化して紹介しつつ,「周りはどうしたらいいのか」にウェイトを置き,現実に起きている「困りごと」の解決・緩和策を導くスタンスゆえ,特に人事や管理職の方にとっては具体的なサポートの方法を知ることができ,理解も進むだろう。

●著者:舟木彩乃  ●発行:SBクリエイティブ
●発行日:2024年11月15日  ●体裁:新書版/229頁

組織変革の教科書

 リクルートグループで組織開発の研究・コンサルティングを展開する執筆陣が編纂した圧巻の教科書。組織・チームのメンバーが喜んで働く要因分析から共通項が導かれたと述べ,「組織責任者」を読者に想定して知見を公開している。ES,ワークモチベーション,コミュニケーション,心理的安全性,ボスマネジメント,リーダーシップといった主要ワードは当然盛り込まれている。加えて,その前段階で,小学生のスポーツチームを例に「寄せ集め集団と組織の違い」を考察したり,幼児たちの遊具の取り合いから「ルールが形成される現象」に着眼したりするなどゼロベースで本質を探っていく思考法はユニークだ。「教科書」ゆえ,理論,実験・測定,相関関係など学術的側面に一定のボリュームが割かれてはいるが,専門領域にはあえてこだわらず,あくまで現実の課題がベースだとも語る。常に状況が変化し,正解がなく,葛藤あふれる現場に向き合うとき,本書で知りえた理論を援用できるか,場当たりな奮闘にとどまるかの差は大きいのかもしれない。

●著者:古野庸一/今城志保/武藤久美子  ●発行:東洋経済新報社
●発行日:2024年11月12日  ●体裁:四六版/367頁

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【評】 久島豊樹 Kushima Toyoki






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