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目標管理をスケールアップさせる方法

潟Cンヴィニオ エデューサー&ディレクター 松本利明

■目標達成のイメージが描けない?

 目標管理を成功させる要諦として,「部門のミッションを伝え,各自の役割を具体的に伝える」「部下を目標設定に参加させることでモチベーションを上げる」などとよく語られるが,それは本当だろうか?
 実際の部門ミッションには大きく変化がなく,目標は上から降ってくる数字や,曖昧で定性的かつ毎年代わり映えしないものであることが多い。各自の役割も,日頃のマネジメントができていれば部下は理解しているケースが大半である。このような状況で積極的に目標設定に参加させても,現実的に達成できそうな目標ばかりを上げてくるだけである。いわば目標達成に向けた“魂”がこもらず,目の前のノルマや課題を“仕分け”しているにすぎない。社員のモチベーション向上とスキル向上を狙った目標管理本来の運営とは程遠い姿となっている。
 この現象は,実際に達成されたイメージがわかないため,目の前のノルマや問題をどうさばくかに意識が集中されることに起因する。「やった結果がどう報われるか,達成した姿をイメージするように」と人事から伝えても,不況の長期化で社員が物事を前向きに捉えることに不慣れになっている。
 ゆえに,目標管理を機能させるために人事が行わなくてはいけないのは,前向きな未来を描き,イメージ力をつけさせることであると考える。

■イメージ力を強化する3つの要諦

 イメージ力の強化には大きく3つの要諦がある。最初は,“目標を考える順番を変える”ことである。現状把握からアプローチするのではなく,目指す姿を描き,解決策を検討してから問題を定義するようにする。最初に現状把握から入るとそれに引きずられてしまい,目指す姿も近視眼的に考えてしまう。例えば「A社の受注をライバルB社に取られて売上が落ちた」という現実があると,どうしても「B社から取り返すには」と考えてしまうのだ。しかし「今後,全社の売上を拡大していくには?」といった目指す姿から考えさせると,B社から取り戻すといったことは大きな問題とは必ずしもいえなくなり,目指す姿に集中しやすくなる。
 次に,現状の延長では達成不可能な高い水準から発想する方法がある。例えば現状を断ち切るため「売上200%UP」のようにする。こうすると,ビジネスモデルも,達成感も,業界内,会社内の身分も,家族との関係も大きく変化している絵を描かざるをえない。ブレインストーミングを開発したオズボーンのチェックリスト法という手法を応用した例で,発想を大きく膨らます際には有効である。このとき,書き方としては「〜しない」という表現ではなく前向きな文章にするのもコツだ。例えば「タバコを吸わない」では我慢を強いられるイメージになるが,「長生きして孫と一緒に釣りをしている」とすると,前向きなイメージが浮かんでくる。
 最後に,目指す姿は共感を生み社員全員が動く映像としてイメージできるように示唆を与え,考えるプロセスに参加させることが重要だ。例えば「当ホテルは県民の皆様に非日常を楽しんでいただきたい」と目指す姿を共有する。次に「当ホテルで非日常を味わう県民の皆様から感謝していただいている場面をイメージして,できることを一緒に考えて実行しよう!」と促せば,お客様に感謝さる自分の姿を想像し,前向きな行動に移していけるだろう。
 このように目指す姿のイメージを具体化するやり方を身につけさせ,目標もそこに至る解決方法から発想するやり方を身につけさせることで社員のやる気に火をつけることが可能となる。人事の皆様には,ぜひこのアプローチの展開をお勧めしたい。

(月刊 人事マネジメント 2011年2月号 HR Short Message より)

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