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人事部門の効率化は進んでいるか

デロイト トーマツ コンサルティング梶@シニアマネジャー 鵜澤慎一郎

■10年前に描かれた人事部門の未来図と現実

 組織・人材マネジメントの新たな潮流を生み出し,人事関係者の注目を常に浴びるデイブ・ウルリッチ氏(ミシガン大学ビジネススクール教授,『Human Resource Champions/邦題:MBAの人材戦略』1997,『HR Transformation/邦題:人事大改革』2010等の著者)。彼が提唱する人事部門の新たなコンセプトや方法論を思い切ってシンプルに整理すると,以下の3点に集約できる。

 グローバル企業の経営者・人事責任者はこぞってこの先進的なコンセプトを自社内で具現化すべく組織再編・業務改革を行ってきた。日本でも2000年頃からシェアードサービス会社の設立や給与業務を中心としたアウトソーシングが本格的に導入され,先進的な企業では「ビジネスパートナー」や「クライアントマネジャー」といった名称で各事業部門に人事メンバーが配置された。そのような取り組みを通じて,21世紀の人事部門は新たな付加価値を創出し,進化している……はずだった。
 実際,シェアードサービスセンターの設立,給与業務のアウトソーシング,ビジネスパートナーの設置といった組織制度面での変革を実行した企業は少なくなかったが,一方で,その結果については「思ったほどにはコストが減らない」「人事部員が高付加価値業務にシフトできていない」との悩みの声を多く聞く(我々が日本独自で実施したHR Transformation Survey 2008でも8割強の日本企業が依然として人事業務はオペレーション中心と回答)。
 先の3つのコンセプトのなかで相対的に手がつけやすく,容易なはずの“効率性”ですでにつまずいているのである。ここの改善なくして他2つのコンセプトを実現する人材の輩出や業務時間の創出は難しい。まずは効率性へのテコ入れが求められる。

■データの測定を超えて解決策を実行する段階へ

 そこで人事部門の効率化の後押しとして,指標管理とその有効活用を提言したい。要は,効率化の指標を設定し,ベンチマーク(自社の経年変化を含む)から,人事部門の人員数やコスト等の改善余地を多方面にわたって検証するのである。
 デロイトではグローバルで人事部門の各主要業務別の適正人員数・適正コストといったベンチマークデータを保有している。例えば従業員1,000人当たりの給与計算に必要な人員数,人材開発にかけるコストといった指標である(合計50項目にわたる)。実際,これらの指標をもとに自社との乖離を測定・把握する企業は増えてきたが,大切なのは,さらに一歩進んで課題発見,解決策につなげることである。アウトソーシングをしたにもかかわらずコスト・人員が改善していなかったある企業では,ベンチマークデータとのギャップを議論する過程でその真因を明確化し,具体的な対応策を打つことができた。
 “我が社の人事部門は効率化したのか?”―このような感覚的な議論から早期に脱却し,具体的なデータ・事実をもとにした議論を進めていくことが望まれる。

(月刊 人事マネジメント 2011年3月号 HR Short Message より)

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事業会社での財務・人事・新規事業開発経験を経て,2005年にデロイトトーマツコンサルティングに入社。実務とコンサルティング両面で豊富な経験を有し,空理空論ではない実行性の高い方法での人材開発・組織変革の支援を得意とする。『As One〜目標に向かって1つになる』(共訳:プレジデント社),『組織を変える!人材育成事例25』(共著:労務行政研究所)他,人事専門雑誌への寄稿や講演多数。

>> デロイト トーマツ コンサルティング株式会社
 http://www.tohmatsu.com/view/ja_JP/jp/