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新入社員を組織に馴染ませるポイント

潟潟Nルートマネジメントソリューションズ シニアコンサルタント 阿久津 徹

 5月になると,早い会社では新入社員の職場への配属が終わっているのではないだろうか。人事としては,一刻も早く会社に慣れて活躍してほしいと考えていることだろう。新入社員が活躍するためには早い段階で自社の価値観・風土に共感し,受容している状態にすることが不可欠である。
 弊社の実施した新入社員意識調査(2012年)では,「仕事についていけるか」(63%),「先輩・同僚とうまくやっていけるか」(42%)といった仕事・職場生活での不安が上位に挙がっており,新入社員は社会・組織の一員となれるか不安を抱いていることがうかがえる。また,過去入社3 年で転職した社員を対象とした調査では,53%が入社後の印象の変化について,「どちらかといえば悪い印象に変わった/非常に悪い印象に変わった」と回答しており,採用時に伝えた価値観と実態との乖離を印象づけてしまうことは好ましくない。組織の価値観・風土に共感し,受容している好ましい状態と新入社員の現実との間にギャップが存在しており,人事としてうまく対処していく必要がある。

■新入社員の定着を促進させる3つの仕掛け

 新入社員は,組織のなかで様々な場面や人と関わり,組織の価値観を感じ,理解を深めることを繰り返し,組織に馴染んでいくものである。このプロセスを早期に,かつ意図的に進めるためには,以下の3 つの観点を考慮した仕掛けを用意すべきである。
@価値観を明示する
 自社がどのような価値観を持った組織なのか明示しながら採用選考を進めることで,会社と個人の価値観のフィットを確認している例は多い。こうした自社の価値観や仕事への姿勢は,入社後も継続して明示していく必要がある。例えば,創業の地や自社の姿勢を示す象徴的な場所へ足を運ぶ機会をつくったり,その場所で創業者や社長が自社のエピソードを語ったりすることで価値観は効果的に伝えられる。その際,自社独特の言葉や言い回しを用いることでより印象に残すことも有効である。
A周囲とのつながりを持たせる
 新入社員は周囲の様々な人と接することを通じ,組織のなかで自身がどう振る舞えばよいかを理解していく。また,困難に直面したり,仕事の意義に悩んだりした際に同僚や先輩の助けを借りて乗り越える体験を経ることで価値観を再解釈し,理解を深めていく。本人がそのような周囲との関係を築くのを待つのではなく,人事が意図的に組織内の縦・横・斜めの関係をつなぐ場を用意できれば,周囲との接点を早期に一気に持たせることも可能である。例えば,同じフロアにいる社員全員と30分話をするよう課したり,同期で1つの課題に取り組みながら交流を図り,発表の機会では職場の全員が良い点と改善点をフィードバックするなどの方法がある。
B仕事から体感・再認識させる
 新入社員は,入社後に仕事を通じた上司・先輩からの指導・育成を通じて仕事の進め方や判断基準などを体感的に知ることになる。基本は職場でのOJTをしっかりと実施していくことであるが,これらを初期に集中して行うように工夫することもできる。現場を巻き込んだ2ヵ月程度の期間を割いた研修のなかで,上司や先輩が効果的に関われるように設計し,自社の価値観の体現を経験させるなどの手法が考えられる。
 以上の3つの観点で自社において新入社員が価値観や風土を感じる場面とその影響を整理してみてはいかがだろうか? 普段の人事の目線では気づかない意外な場面が,新入社員に大きな影響を及ぼしていることが分かるかもしれない。

(月刊 人事マネジメント 2013年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
アミューズメントメーカー、外資系コンサルティング会社を経て現職。組織開発を主軸に、戦略推進・業務改善・営業力強化などの広範囲なテーマでコンサルティングを担当。トレーニングやサーベイの商品開発、経営理念の浸透などのテーマ研究にも携わる。

>> 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
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