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就職日本一の国立大学で本気のキャリア教育に挑む

一橋大学 特任教授(経営学博士) 西山昭彦

■一橋大学と東京女学館大学の就職実績

 2013年の4月から,私は一橋大学でキャリア教育の授業とキャリア支援の仕事をしている。3月卒の内定率は,2011年の95.4%が底で,2012年96.5%,2013年97.0%と上がってきている。現4年生も続々と内定をとっている。内定先も大企業のオンパレードである。しかも,ある大手企業の採用担当は5月に,「まだ内定者が足らないので,ぜひ学生を紹介してほしい」とわざわざ訪問してくれた。大学側としては感謝の極みである。全体として,『週刊ダイヤモンド』で「就職に強い大学日本一」と評価された通りの(それを超える)現実がある。
 他方,ここであえて比較するのは, 3月まで勤務していた東京女学館大学の西山ゼミ(経営学)だ。2006年卒から過去8年間の就職率の平均は94.4%である。実はこの数字は全在籍者のうち就職した学生の率である。全国の大学が発表する数字は就職を希望した学生を分母としたもので,それとは違う。従って,実際には一橋大学と拮抗している可能性がある。内定者のうち大企業(グループ会社含む)が70.8%と,就職先を見ても好成績を挙げている。

■「就職に強い国立大学」にも弱点が?

 一橋大学は外部からの評価が高く,就職に恵まれた環境にある。実態もまた,授業時の質問や感想文ではとても鋭い指摘があるなど,学生のレベルは高い。最近は,卒業に必要な全科目の平均点も設定されており,授業を欠席する学生は本当に少ない。こうしたプロセスで鍛えられた論理的思考力を武器に早期に内定を獲得する。しかし, 5月に内定が出ないと,少数だが,早々とあきらめて留年を考える者もいる。これら未内定者の志望先を見ると,自己分析を踏まえた業界の絞り込みがなされていない点が目につく。多くの学生が揃って三菱商事や三菱東京UFJ銀行を目指しても受かりようがないのは明白だ。
 他方,東京女学館大のゼミ生の場合は,外的環境にあまり頼れないので,自己分析を徹底し自分の適性にあった業界を絞り込んで内定を獲得する。遅い時期になってからの内定も多くあるし,「大企業」の範囲も学生の知らないBtoB企業や大手のグループ企業など幅広い。あきらめての留年者はいない。この実績を支えるのは,1年次からの早期のキャリア授業と4年間を通じてのきめ細かいキャリア支援である。学生は初めは社会も企業も知らないのだから,そのギャップを埋めていかなければならない。

■本気でキャリア教育を仕掛ける

 この女子大での実践を一橋大学に持ち込もうというのが私の狙いだ。1年次のキャリア授業を2013年より始める。学生には生涯キャリアを考える視点を提供し,おぼろげでも自己のキャリア仮説を構築してもらう。2〜3年次は,これまでも担当していたが,毎週社会で活躍する異なる分野の人を招いての授業(企業が大学へ)と,インターンシップ(学生が企業へ)のほか,今年より企業での経営課題の解決に挑むワークショップを始める。直近のキャリア授業で,株式公開したIT社長の資産300億円や外資役員の海外出張100泊などの話を聞いて,いい意味でショックを受けた。2〜3年次のこのような社会と触れるプロセスを通じて,キャリア仮説を修正し,現実の志望先を狭めていく。
 私の職務は,学生のキャリア教育と支援にまたがる統合機能である。キャリア授業の企画・運営,就職イベント管理,個別カウンセリング,企業とのパイプ作りを大学として強化していく。おおげさだが,日本一就職に強い国立大学が本気でキャリア教育を行ったらどこまで行けるか,その社会実験の日々は手応え十分である。

(月刊 人事マネジメント 2013年7月号 HR Short Message より)

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一橋大学社会学部卒業、東京ガス入社。ロンドン大学大学院政治経済学科留学。ハーバード大学行政管理学修士課程修了。財団法人中東経済研究所出向。社内ベンチャーで(株)アーバンクラブ設立、取締役就任。法政大学大学院社会科学研究科博士課程修了、博士 (経営学)。東京ガス都市生活研究所長、法政大学大学院客員教授、東京ガス西山経営研究所長、東京女学館大学国際教養学部教授を経て、2013年一橋大学特任教授。ほかに2010年から横浜市経営諮問委員、専門委員。著書は『西山ゼミ就活の奇跡』プレジデント社ほか56冊。講演は計1,000回を超える。

>> 一橋大学
 http://www.hit-u.ac.jp/shushoku/career_support/nishiyama.html