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OJLを展開し学習する組織を作ろう

(株)経営コンサルタント協会 代表取締役 作山弘司

■競争力が高まる組織づくりが期待されている

 経済情勢に多少の明るさが見え始めたとしても,競争環境が熾烈であることに変わりはない。国内外を問わず,他社に勝る高付加価値な製品やサービスを提供し,お客様の高い信頼,支持を獲得する適応行動やビジネスを発展させるためのノウハウを更新する活動が現場第一線の社員に強く求められている。
 現場での価値創造が競争力の源泉であり,現場のイノベーションが組織の中心的な戦略課題ということである。現場で自らがチャレンジングな目標を掲げて高度なノウハウを主体的に駆使するプロフェッショナルな自律分散型人材を育成し,競争力が高まる組織づくりをすることが期待されている。

■上司任せの「OJT」から,本人主体の「OJL」へ

 現場でナレッジ創造や顧客価値創造を行い,新規性の高い課題に臨機応変に対応できる人材の育成,組織づくりはどうあればよいのだろうか。
 現場を強化する人材育成方法を問われるとOJTを思い浮かべる方が多いだろう。同じ職場の上司や先輩社員が日常の仕事を通じて(On the Job),意図的,計画的,重点的に部下を育成する(Training)取り組みである。OJTは現場の実情と部下の個別ニーズに対応できる教育であるから,職務遂行上で必要となる知識やスキルを習得させ,業務成果を高めることが目的ならば,これはこれで悪くない。新入社員の早期戦力化,若手社員のスキルアップがテーマであればOJTは特に有効である。
 ただ,日常の業務場面でリーダーがお手本を見せたり,技術習得のための指導をしたりするOJTで新たな現場力の創造が実現できるのだろうか。上意下達の部下育成を行うことで既存ノウハウを発揮する人材は育成できたとしても,現場の変化に俊敏に適応する人材の育成にはつながらない。
 変化に適応できる自律分散型人材を育成する1つの方法として,「トレーニング」から「ラーニング」に進化させたOJL(On the Job Learning)の取り組みをお勧めしたい。
 OJLは,基本業務をマスターした中核人材が旺盛な成長意欲のもとで設定した目標を現場で試行し,学習するプロセスを重視して新たな気づきの獲得やナレッジ創造を実践できる取り組みである。OJLの展開は「成長したい,自己実現したい」という成長願望の強い人材に権限委譲し,職務遂行を通じて知見を獲得できるような学びの場づくりである。

■学習する組織づくりではリーダーの役割が重要

 OJLを展開し学習する組織づくりを実現するためには,個人を単なる労働力ではなく,主体性と成長への意思を持った存在として尊重することが肝心である。組織の使命やビジョンを共感,共有化,浸透させることも欠かせない。
 鍵となるのはリーダーだ。現場の最前線で活動する部下・後輩がパフォーマンスを向上させ,仕事ぶりの変化や成長の実感が得られやすいように自主性を最大限重んじながら,彼らが互いに切磋琢磨して持ち味を十分に引き出せるような環境を作り出す役割が期待されている。リーダーは部下・後輩が主役であるという認識に立ち,職務遂行の様々な場面で問いかけ,振り返り,共有を行い,相手の意思や思いを引き出す働きかけを強化したい。部下が組織にコミットし,自身の役割を自律的に果たせるような職場リーダーの関わりが,相互信頼を高め,職場全体の自律性も高めるのである。
 互いに学び合うことによって,持続的な成長を遂げるために必要な市場や競争環境の変化,多様な顧客ニーズに適応できる俊敏な組織づくりが進展するのである。

(月刊 人事マネジメント 2013年12月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1960年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務を経て,(株)経営コンサルタント協会に入社。中小企業診断士の教材開発に携わった後,コンサルタントとして,20年以上,経営指導,人材育成の任にあたる。組織人事戦略の策定や人事制度改革,教育体系構築,次世代リーダー人材育成などを中心に大手企業から中小企業までコンサルティングと教育研修の実施,さらには各社のオリジナル教材開発など幅広い支援を手掛けている。

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