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デキるプレイングマネジャーに学べ

(株)リクルートマネジメントソリューションズ 主任研究員 三国 剛

■「課長=プレイングンマネジャー」の時代

 ある調査によると,日本の上場企業の部下を持つ課長のうち,99.2%が職場のマネジメントを担いつつプレイヤー業務も行っているという(『上場企業の課長に関する実態調査』学校法人産業能率大学/2013年6月)。つまり現代の日本企業のほとんどの課長が「プレイングマネジャー」といっても過言ではない。マネジメント業務とプレイヤー業務のどちらも求めれられている難度は高く,実際に高いレベルで両立できているマネジャーは少数である。

■「分かっているのにできていない」実態

 プレイングマネジャーは,なぜ難しいのか。プレイングマネジャーの業務には次の3種類がある。
【A】プレイヤー業務……実務
【B】マネジメント業務……仕事の側面(仕事の管理・仕事の改善)
【C】マネジメント業務……人の側面(チームワークづくり・人材育成)
 業績圧力(特に短期業績)の強い状況下で特に不足しがちなのは【C】である。実際に研修場面で,プレイングマネジャーの方々に1週間のマネジメント行動を書き出してもらうと,人の側面のマネジメント行動がほとんど見られない。マネジメントの原理原則やコーチングを学習している企業でも結果は変わらない。ほとんどの人が「部下育成やチームビルディングは重要だ」と分かっているのにできていない。これが実態であり悲劇である。
 では,なぜ重要だと思っているのに実践できないのだろうか。野球のバッティングにたとえてみよう。まず,きれいなバッティングフォームを身につけることは大切である。しかしそれだけでは3割の打率は残せない。加えて,体幹・動体視力・配球のヨミなども併せて会得する必要があるのだ。マネジメントでいえば,「マネジメントの原理原則」が,きれいなバッティングフォームに相当する。では,体幹・動体視力・配球のヨミに匹敵するのものは何か。

■ハイパフォーマーがやっていること

 私たちは,ハイパフォーマーに対するフィールド調査の結果,次のような結果を得ている。例えば,「仕事の指示」をする場面で比較してみよう。
 普通のマネジャーは,「Aさん,この仕事を金曜の17時までにやってください」と,納期の明確な指示をする。マネジメントの原理原則に照らして正しい。
 一方ハイパフォーマーは,「Aさん,この仕事やってみない?」と,アバウトな指示をする。その意図を尋ねると,「Aさんは,押し付けを嫌うタイプ。だから誘うような言い方をし,本人の自主性に任せる形をとりました。他の部下には違った指示の仕方をします」と語っていた。つまり仕事の管理(指示)と部下の動機づけの一石二鳥を狙ったマネジメント行動をとっていたのだ。ハイパフォーマーの方々の1日のマネジメント行動を詳細に調べた結果,このような仕事の側面と人の側面の同時行動の出現率が50%近かった。
 フィールド調査の結果,デキるプレイングマネジャーは以下の3つのことを行っている。
@「仕事」と「人」のマネジメントを同時に行う
A視野は鳥の目・虫の目の両方。時間軸は,目先〜5年先・10年先を見ている
B部下の動機の源泉を短時間でつかむ
 これらがバッティングのたとえでいう,体幹・動体視力・配球のヨミに匹敵する部分だ。先ほどの「仕事の指示」の仕方は,@を象徴するエピソードである。
 プレイングマネジャーに今最も必要なのは,“実際に使える”@〜Bのノウハウを身につける機会である。

(月刊 人事マネジメント 2014年1月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1984年リクルート入社。1985年より一貫して人材開発領域の営業・研修開発に携わる。主領域は、(1)ミドルマネジメント・中堅など階層別研修、(2)営業変革領域、(3)事業戦略浸透・推進。

>> 株式会社リクルート マネジメント ソリューションズ
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