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課長を元気にする3つの方法

やまさだ経営コンサルティング 代表/特定社会保険労務士 山口貞利

■元気のない課長たちをどうするか?

 多くの企業で管理職研修を実施していて感じるのは,覇気のない課長が多いことです。最近は管理職を対象に「パワハラ防止研修」を依頼されることも多いのですが,先日ある企業で研修を行った後に,こんな要望を受けました。
 「私たち管理職は部下に気を使って対応しているつもりです。どちらかといえば,我々管理職がパワハラの被害に日々あっているようなもので,パワハラをしないための心がけも大事ですが,被害を受けた際の対応をどうするかも教えてください」
 この管理職によれば,下からのパワハラめいた言動や上からのダイレクトな言動で名実ともに中間管理職がトゲだらけの板挟みにあっているというのです。管理職は強い立場だと思われているのか,部長が課長を責めたてるということもしばしば耳にします。上長には厳しくされ,部下には気を使い,あるいはその厳しさを部下にストレートにぶつければ,パワハラを警告されるとなると課長は“どうしてよいのやら”という感じでしょうか。さらには組織内で起こっているメンバー間のいじめ問題への対応に戸惑っている実態もあります。
 「もっと課長には強くなってもらいたい」と言うのは簡単ですが,どう強くなってもらうかが課題です。ポイントは「言うべきことをはっきり言えるようにする」ことです。

【1】「アサーション」のスキルを習得してもらう

 今,課長たちに身につけてもらたいスキルの1つに「アサーティブ・コミュニケーション」があります。「アサーション」ともいわれるもので,相手も自分も大切にするコミュニケーションのあり方です。これができれば,自分の意思や感情を抑制して相手の言いなりに従うストレスから解消されます。また,はっきり言いすぎて相手を傷つけるようなこともなくなります。
 具体的には,事実や現状を伝えたうえで相手に要求する,あるいは代案を示して相手の理解を得る手法です。思い通りの結果にならなくても,自分の意思や感情を伝えるプロセスを経ることでストレスが軽減します。上司や部下からのパワハラにも,適切な対応がしやすくなります。

【2】仕事を任せるスキルを身につけてもらう

 部下に上手に仕事を任せることも,課長が元気になる手段の1つです。プレイングマネージャーのなかには部下に負荷をかけないようにと“間違った気遣い”をする人がいます。あるいは部下への仕事の指示がうまくなく,指導育成ができていないケースも見受けられます。率先垂範は重要ですが,実務を誰よりも一生懸命やることが課長の役割ではありません。課長には,部下にどんどん任せていくスキル(指示命令の出し方と部下育成のスキル)の向上が求められます。課長の本来の仕事はプレイではなくマネジメントです。チーム全体の成果をバランスよく達成し,部下が順調に育つよう推進していく使命があることに気づいてもらいましょう。

【3】課長同士がフランクに話せる機会を提供する

 「研修」とするか「会議」とするか形式は問いませんが,部門を超えて課長の集まる場を定期的に設けると効果があります。係長までは同僚が多く,愚痴や相談の相手に困りませんが,課長ともなると孤独な立場になります。そこで同じ立場同士でざっくばらんに話し合える場(ガス抜きの場)を提供するのです。一例ですが,「アサーション研修」と銘打ってフランクに発言してもらう,あるいは問題解決スキルの習得とともに,課長自身の元気を取り戻す「課長スピリッツ研修」などは有効です。

(月刊 人事マネジメント 2014年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1961年生まれ。関西学院大学卒業後,東証一部上場企業(千趣会)にて商品企画,人事職担当。グループ企業全般の人事マネジャーを経て退職。2007年人事コンサルタントとして独立。課長を元気にするマネジメント等の研修や人事制度構築・改善のための活動を中心に手がける。著書に『実際にやってみてわかった中小企業M&A成功のための人事労務』がある。

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