*

HRM Magazine

人事担当者のためのウェブマガジン | Human Resource Management Magazine
HOME

ネットの炎上から会社を守る方法

特定社会保険労務士/せんだ社会保険労務士事務所 代表 専田晋一

■日本中を席巻したバイトテロの嵐

 2013年の夏,TwitterやFacebookなど,若者によるソーシャルメディアへの“悪ふざけ写真投稿”を巡るトラブルが日本中を席巻しました。次々と明らかとなったトラブルは時に全国ネットのニュースとして報じられたこともあり,ご記憶の方も多いでしょう。なかでも飲食店アルバイトによる,食品や店舗設備を使った悪ふざけ写真は,ネット上で衛生面や非常識ぶりを激しく糾弾する「炎上」と呼ばれるトラブルとなり,あまりの多発ぶりから「バイトテロ」とまでいわれました。投稿したのはアルバイトですが店側のダメージは大きく,管理責任を問われた店が閉店・廃業に追い込まれる事例も発生し,企業経営に大きな影響を与える社会問題になりました。
 しかし,現在もこの問題について企業の対策が進んでいるとはいえません。社員の不適切な行為やネットへの投稿は「個々の良識の問題」と考え,抜本的な対策を講じていない企業は未だに多数を占めます。誰でも気軽にネット上へ情報発信ができるようになった今日,こうした問題は企業として無視できない課題ではないでしょうか。社員のプライベート領域でのネット利用まで会社は制限できませんが,少なくも「バイトテロ」のような事例や業務に関わるケースについては,会社からの対策が不可欠です。

■ソーシャルメディアガイドラインの必要性

 実際,対策が必要なことは社会的にも認知されていますが,企業担当者から聞かれるのは,「どう対応したらよいかよく分からない」といった声です。しかし,あまり難しく考えることはありません。まず必要となるのは,会社として「ルール」を示すこと,会社に不利益を与えるおそれのあるネット投稿の適否について,社員の判断だけに任せず,「発信してよいこと,悪いこと」を会社から具体的に示すのです。少なくともこうしたルールがなければ,社員への指導や不適切な投稿をした社員の処分は難しいでしょう。このルールに相当するものが「ソーシャルメディアガイドライン」(呼び方は様々)です。
 では,このガイドラインはどのように作ればよいのでしょうか。「発信して悪いこと」として一般には,「会社の秘密に関する情報(製品・サービスの仕様,価格などの企業秘密)」「非公知の会社情報(製品・サービス,財務,事業計画,人事,組織変更などの情報)」「業務上知り得た顧客および取引先をはじめとする関係者の情報」などが挙げられます。これをベースに自社で投稿されては困ることや発生しそうなトラブルについて考えてみてください。そして,それらを具体的に箇条書きで書き出し,できるだけ分かりやすい表現でまとめてみてください。この作業を何度か繰り返すとガイドラインの骨格が見えてきます。

■ガイドライン以外の方法も組み合わせる

 ガイドライン作成にあたっては,同じ会社の中でも職種や役職による違いなども踏まえなくてはなりません。こうした違いを考えるとき,ガイドラインだけで問題を解決しようとすると必ず無理が出てきます。そこで,ガイドラインを補完する方策も必要になります。例えば,研究職など特別な環境にある社員には「誓約書」の提出を検討する必要があるかもしれません。また,社員から寄せられる質問をまとめた「Q&A集」の作成や過去のトラブル事例を踏まえた研修などでガイドラインの理解と,ネット絡みのトラブルを起こさないスキルを社員に学習してもらう方法も考えられます。社員のプライベートでのネット利用に端を発したトラブルから会社を守るには,ガイドラインに加え,複数の方法をうまく組み合わせた対策を考える必要があります。

(月刊 人事マネジメント 2014年6月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

  
1973年東京生まれ。会社を巻き込むソーシャルメディア炎上トラブルが、企業経営に与える影響にいち早く注目し、トラブルが顕在化し始めた2011年初頭より現在までに数百件以上に及ぶトラブル事例の収集、分析にあたる。企業内で発生するソーシャルメディアが関連するトラブルの対応を数多く手がけるほか、社会保険労務士として、労働法を踏まえた企業向けのソーシャルメディア・ポリシー作成支援サービスなど、独自のサービスを考案、展開している。

>> せんだ社会保険労務士事務所
 http://kanri-shien.com/blog/