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意外と難しい勤怠管理システムの選び方

(株)ネオレックス CEO 駒井研司

 出退勤時刻を記録し,勤務時間を集計する勤怠管理。今も紙のタイムカードは日本中で利用されている。そして,電卓やエクセルでの集計作業を卒業し,システム化したいと考えている人たちも大勢いる。ところが,システム化は意外に難しい。いったい,どんな選択肢があり,どのように最適なシステムを選べばよいのだろうか。

■システム化には3つの選択肢がある

 勤怠管理システム化の選択肢は,大きく3つある。
 1つ目は「高機能タイムレコーダー」。小規模な事業者で,あまり特殊なルールがない場合に適している。タイムレコーダーをPCに接続してデータを取り出すもの以外に,最近はパソコンのソフトやiPadのアプリもある。「高機能」といっても,単純な集計から複雑な計算まで様々。また,各種の給与ソフト向けにデータ出力できるものもあれば,素データしか出力できないものもある。従来の紙のタイムカードを利用するタイプなら打刻操作(ガッチャン)も変わらないので,親しみやすいだろう。ただ,毎月全員分のカードをシステムに登録する作業が必要だったり,消耗品費がかかったりするので留意が必要だ。今後,このカテゴリーでは,ランニングコストがなく,パソコンのような複雑さや面倒がないタブレットアプリが主流になると考えられる。
 2つ目の選択肢は「クラウド勤怠管理システム」。これは,比較的規模が大きい企業に向いている。集計ルールへの対応は製品によって様々であり,シンプルなものから非常に複雑なルールに対応しているものまである。インターネットの利用により,遠隔地の情報をリアルタイムに把握できることが大きな特徴だ。店舗網や工場,物流センターなど,複数の拠点を持つ企業にとってメリットの大きい選択肢となる。ただ複数拠点があっても,日々の管理は各拠点の管理者が行っているという企業で,本部や経営者によるリアルタイム管理も不要なら,クラウドシステムである必要はない。クラウドシステムには月額費用が発生する。利用規模や機能構成などに応じて,割安になることも,割高になることもある。
 3つ目の選択肢は「買取型の勤怠管理システム」。本社のみ,本社と工場だけなど,拠点が少なく,人数が多い企業に向いている。クラウドが普及する前は,こうした買取型しか選択肢がなかった。カスタマイズに柔軟に対応できる製品が多く,特殊なニーズにも応えられる。ただ,自社でサーバーを管理する必要があり,各拠点を独自にネットワークでつなぐ必要もある。そして高額なものが多い。今後はクラウド型が主流となり,買取型は,クラウドでは対応できない独自のニーズを持つ企業向けに,高度かつ高価なシステムとして洗練されていくと思われる。

■自社に適した製品を選ぶヒント

 3分類から1つ選んだら,具体的な製品はどう絞るのか? それぞれに多くの製品があり,この選択も非常に難しい。そこで,まずは「実績」に注目してみたい。一定以上のユーザーを持つ製品,また,自社と同業あるいは似た勤務体系のユーザーが多い製品は目安になる。そして,いくつかの製品をピックアップしたら,自社のニーズに対応できるかを確認する。自社では当たり前だった集計ルールが実は特殊で,製品によっては対応できないということも起こりうる。不明点があれば問い合わせ,詳細を確認するべきだろう。そのとき,提供企業が勤怠管理や関連法規にどの程度詳しいかも見極めるといい。
 勤怠管理はあらゆる企業が行っている。そしてそのルールや考え方は千差万別だ。だからこそ世の中には多様な勤怠管理システムが存在している。まずこの前提で,最適なものを選んでいただきたい。

(月刊 人事マネジメント 2017年1月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
サンフランシスコにて、NPO法人「アライアンスフォーラム」でのインターンを経て、信州大学卒業後、プライスウォーターハウスコンサルタント入社。2001年、ネオレックス入社。以来、クラウド勤怠管理システム「バイバイ タイムカード」やiPad向け勤怠管理アプリ「タブレット タイムレコーダー」などの企画・設計・提供に従事。これら製品により、15万人以上の勤怠管理がシステム化されている。

>> 株式会社ネオレックス
 http://tablet-time-recorder.net/