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組織行動力と定着率の関係に注目

(株)アイデム 人と仕事研究所 波多野雅彦

 完全失業率が3.0%を下回り,有効求人倍率も四半世紀ぶりの高水準。人手不足が深刻化しています。労働力不足を補うために技術革新による生産性向上も必要ですが,今すぐに対応可能かというと難しい面もあるでしょう。今できる対応として,いかに現存スタッフの離職を防止し,組織力の低下をくい止め,業績向上を図っていくかを,継続的に考えていきたいところです。

■スタッフが離職したくなる理由

 「介護」「小売」「教育」「サービス」業に携わっている私の身近なお客様も,スタッフの離職をくい止められず,組織力の低下に悩まされています。では,その離職の主な理由は何でしょうか。1つの根拠として非正規スタッフを対象に調査した結果をご紹介します(アイデムオリジナル調査資料)。これによると,「辞めよう」と思う理由は,「職場の人間関係が良くないとき」が最も多くなっています。それ以外でも,「頑張っても何の評価もされない」「納得のいかない理由で上司に叱責された」「上司との信頼関係が築けない」等,上司との人間関係が離職理由の多くを占めています。賃金,労働日等の条件もさることながら,長く働いていくには,その職場環境,人間関係が重要だということがデータから読み取れます。続いて,上司の問題点に関する調査結果もみていきましょう。問題点のトップ3は,「業務の指示・命令に関すること」「上司自身の仕事ぶりに関すること」「挨拶や会話など日頃のコミュニケーションに関すること」となっています。業界,業種を問わずどこにでもある日常的な課題です。当たり前過ぎて,上司としては意識をしていないのかもしれませんが,そこをスタッフは敏感に感じ取っています。

■中間管理職の本来の役割は何か

 上司は上司で辛い立場にいます。特に多事業所で展開している業態の場合,本社と事業所とのパイプ役であると同時に,事業所では所長,マネジャー,店長であったりします。本社の方針を受け,事業所ではリーダーシップを発揮して組織をマネジメントしていく役割です。事業所ではトップであっても,組織全体では中間管理職といった立場であり,業務の効率化を求められ,プレイヤーも兼ねている場合が多く見受けられます。そのため,非常に忙しくスタッフへの対応が十分にできないこともあるようです。しかし,今働いているスタッフと協働して生産性を高め職場を運営していくことこそ,上司であるリーダーの本来の役割であるはずです。

■組織行動力が高ければ定着率も向上する

 生産性高く職場を運営していくうえで欠かせない要素が「組織行動力」です。組織行動力とは「組織,チームが一丸となって,目標を達成する力」のことです。組織行動力を強化するには,リーダーシップ(=目標に向かってメンバーを観察,巻き込み,誘導する力)とマネジメント(=目標に向かってPDCAを回す力)の強化が必須です。また,上司,リーダーはもとよりメンバー1 人ひとりにも「ポジティブ思考,論理的思考」「コミュニケーション能力」「協調力」が求められます。さらに,業績向上を目指し,経営理念・経営目標の浸透,顧客満足・従業員満足の徹底,働きやすい環境を作っていく組織的な取り組みも必要でしょう。
 定着率を向上させる条件は,突き詰めると「メンバーがイキイキと働き,徹底的に成果にこだわるチームを実現する」ことになります。多様な働き方が尊重される今こそ,組織として同じベクトルで行動するための教育・訓練という場づくりは必要です。組織行動力を高める取り組みが,結果的に定着率を向上させる条件といえるでしょう。

(月刊 人事マネジメント 2017年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大学卒業後、大手ゼネコンにて国内外建設プロジェクトの施工管理に従事。経営学修士号取得後、経営コンサルティング会社にて、経営体質改善・人材育成支援業務に携わる。現在、アイデム人と仕事研究所にて、教育・研修を通してお客様が目指す会社づくり、人づくりにお役に立てることを目指して日々業務に取り組んでいる。

>> 株式会社アイデム 人と仕事研究所
 https://apj.aidem.co.jp/